高齢女性の大腿四頭筋収縮時の筋硬度および筋厚の変化とパフォーマンスとの関連性

DOI
  • 池添 冬芽
    京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻
  • 市橋 則明
    京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻
  • 太田 恵
    京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻
  • 塚越 累
    京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻
  • 島 浩人
    佛教大学保健医療技術実習センター
  • 浅川 康吉
    群馬大学医学部保健学科

Abstract

【目的】高齢者における大腿四頭筋筋力が移動能力と密接に関連していることは多く報告されているが、筋のスティフネス(筋硬度)や筋量が高齢者のパフォーマンス能力にどのような影響を及ぼすかについては明らかではない.本研究の目的は高齢者の大腿四頭筋を収縮させたときの筋硬度と筋厚の変化およびそれらとパフォーマンス能力との関連性について明らかにすることである.<BR>【方法】対象は養護老人ホームに入所している高齢女性35名(年齢84.5±6.0歳)とした.対象者には本研究の目的を説明し、同意を得た.<BR> 筋硬度計(NTI製マイオトノメーター)を用いて右側の大腿四頭筋を1.5kgの圧迫力で押したときにプローブが貫入した移動距離(筋硬度)を測定し、3回測定した値の平均値をデータとして用いた.また、超音波診断装置(GE横河メディカルシステム製)を用いて右側の大腿直筋と中間広筋をあわせた筋厚および皮下脂肪厚を測定した.大腿四頭筋の筋硬度および筋厚の計測部位は上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結ぶ線の中点とした.筋硬度および筋厚は背臥位、股・膝関節伸展位での安静時と大腿四頭筋の等尺性収縮時(収縮時)の2条件で測定した.パフォーマンスとして、5回立ち座り時間、5m最大歩行時間、Timed Up & Go test(TUG)を測定した.<BR> 安静時と収縮時の筋硬度および筋厚の比較には対応のあるt-検定を用いた.また、各項目間の関連について分析するため、pearsonの相関係数を算出し、有意性の検定を行った.<BR>【結果と考察】大腿四頭筋の移動距離(筋硬度)は安静時が11.4±2.5mm、収縮時が10.6±3.7mmであり、安静時と収縮時との間に有意差はみられなかった.筋厚は安静時が24.6±7.9mm、収縮時が27.7±7.8mmであり、安静時より収縮時の方が有意に高い値を示した.また、筋硬度は安静時・収縮時ともに皮下脂肪厚との間には相関がみられなかったが、筋厚とは有意な相関がみられ(安静時r=0.72、収縮時r=0.62)、筋硬度値は皮下脂肪厚の影響は少なく、筋厚との関連が強いことが示唆された.<BR> 筋硬度および筋厚とパフォーマンスとの関係性については、安静時の筋厚および筋硬度はパフォーマンスとの相関がみられなかったが、収縮時筋厚と立ち座り時間との間、収縮時筋硬度とすべてのパフォーマンス項目との間に有意な相関が認められた.<BR> 本研究の結果、安静時と収縮時の筋硬度には変化がみられなかったことから、高齢者においては収縮時に筋のスティフネスを高めることが困難であることが示唆された.また、筋硬度・筋厚とパフォーマンスとの関連性の結果から、高齢者が素早く動作を遂行するためには、大腿四頭筋の筋量だけでなく、収縮時に筋のスティフネスを高めることも重要であることが示唆された.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565964032
  • NII Article ID
    130004581265
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.e3p1235.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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