心拍変動からみた重度脳性麻痺児における自律神経機能の特性について

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抄録

【目的】<BR> 本研究は、重度脳性麻痺児を対象に、心拍変動周波数解析を用いて交感神経と副交感神経の関連から自律神経機能の特性を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】<BR> 対象は、粗大運動能力分類システムで最重度となるレベルVに相当する重度脳性麻痺児10例(6~11歳 平均8.4歳)をCP児群とした。また、同年代の健常児15例(6~11歳 平均8.8歳)を健常児群とした。<BR> 自律神経機能の測定には、簡便で非侵襲的であり、短時間で測定可能な加速度脈波計を使用した。加速度脈波から得られる心拍から心拍変動周波数解析を行った。得られた心拍変動周波数は最大エントロピー法(以下MEM)を用いて解析し、MEMで得られたデータの中で心拍の周波数をLow frequency(0.04-0.15Hz)(以下LF)とHigh frequency(0.15-0.40Hz)(以下HF)に分けた。LF成分は交感神経系、HF成分は副交感神経系との関連が示されていることから、LFとHFの比(以下LF/HF)、LF%、HF%を自律神経機能の指標とした。測定時の姿勢は、CP児群においては児の最も好む安楽体位、健常児群においては仰臥位とした。それぞれの姿勢で、左手示指に測定端子を装着して5分間の安静をとった後、1分間の計測を行った。<BR>【説明と同意】<BR> 全例に対して事前に研究の主旨を保護者に口頭と文書にて説明し、同意を得た。<BR>【結果】<BR> (1)LF/HFのCP児群と健常児群の比較においては、CP児群が有意に低値を示した(p<0.01)。<BR> (2)LF%のCP児群と健常児群の比較においては、CP児群が有意に低値を示した(p<0.01)。<BR> (3)HF%のCP児群と健常児群の比較においては、有意差は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 今回の結果から、CP児群は相対的に副交感神経系が優位な状態にあることが考えられた。さらに、HF%には有意差を認めなかったことから、安静時においてCP児群は交感神経系の機能低下が考えられた。小川らは、交感神経皮膚反応テストにより重症心身障害児は12歳未満の早い時期から交感神経系が障害を起こすと報告している。本研究のCP児群も同様に心臓自律神経機能における交感神経系の機能低下が考えられた。我々はこれまでに、重度脳性麻痺児に対する抗重力姿勢活動が交感神経系に対する刺激となることを報告している。また、三田らにおいても座位を経験している重症心身障害児は健常児と同等の心拍数反応が見られることを報告している。<BR> 以上より、重度脳性麻痺児は早期から副交感神経系に比べて交感神経系の機能低下を起こす可能性が考えられた。そのため、心拍変動周波数解析を用いて重度脳性麻痺児の自律神経機能の特性を把握することは自律神経機能の低下を予防、改善することにつながる可能性が考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 重度脳性麻痺児は、体温調節障害、睡眠リズム障害、消化器症状、排尿障害など自律神経症状がみられることが多い。この原因に、重度脳性麻痺児は、中枢神経病変が広汎にわたっており中枢性の自律神経路に障害をきたしていることが考えられたが、寝たきりなどによる姿勢・運動経験の少なさが自律神経機能の低下を増悪させている可能性も考えられた。近年、脳性麻痺児の自律神経機能については、自律神経機能の反応性の低下が報告されている。そこで本研究では、自律神経機能のなかでも交感神経と副交感神経の関連性について検討した。また、姿勢・運動の影響が示唆されていることから日常的な自律神経評価の必要性が考えられた。そのため、簡便かつ短時間で測定可能な加速度脈波計を用いた心拍変動周波数解析による測定データは特に重要と考えられた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009(0), A3O3026-A3O3026, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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