Timed Up & Go Testに運動課題を付加した二重課題バランス評価は地域在宅高齢者の転倒予測因子になりうるか  [in Japanese]

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Author(s)

    • 山口 賢一郎
    • 上尾中央総合病院リハビリテーション技術科|埼玉県立大学大学院リハビリテーション学専修
    • 宮原 拓也
    • 上尾中央総合病院リハビリテーション技術科
    • 坂上 昇
    • 了徳寺大学健康科学部理学療法学科
    • 丸岡 弘
    • 埼玉県立大学大学院リハビリテーション学専修

Abstract

【目的】高齢社会であるわが国において、転倒は高齢者の日常生活動作を制限する大きな因子の一つであり、高齢者やその家族が抱える大きな不安と言える。転倒に関する研究の一つに、二重課題(以下、Dual Task)でのバランス機能評価があり、転倒予測因子としての有用性が示されている。先行研究では、運動課題に認知課題(記憶、数字の逆唱等)を付加した評価法を用いているが、地域在宅高齢者において日常生活で遭遇する場面に類似した評価法によってフィードバックすることで、より転倒に対する意識づけが可能ではないかと考えた。そこで本研究では、既存の動的バランス評価であるTimed Up & Go Test(以下、TUG)に運動課題を付加し、転倒歴の有無によって課題遂行能力に差異が生じるか、転倒の予測因子となりうるかを検討した。【方法】対象は、平成20年度に行われたS県K市の運動機能測定に参加した、要支援・要介護状態にない地域在宅高齢者153名(男性40名、女性113名、年齢70.5±5.0歳)である。測定項目は、TUG、Dual Task TUG、転倒に関するアンケート(転倒歴、転倒場所、転倒の理由、日常生活における動作遂行の自己効力感Modified Falls Efficacy Scale(以下、MFES))を実施した。Dual Task TUGは、上縁から3cm下まで水が入った12cmのコップを利き手に持ち、水をこぼさないようTUGを行うものであり、TUGとともに最大歩行で実施した。その際、先行文献に準じ「水をこぼさないようにできるだけ早く帰ってきてください」との合図を用いた。測定の順序はコインの裏表で決定し、1回の練習を実施した後にTUG、Dual Task TUGを行った。水をこぼした場合は再測定とした。分析は、アンケート結果より対象を屋内転倒群、屋外転倒群、非転倒群の3つに群分けをし、TUGとDual Task TUGより求めた変化率(Dual Task TUG/TUG×100)とMFESについて比較を行った。統計処理はSPSS Ver.15.0を用い、各群ごとにTUGとDual Task TUGの測定値の差について対応のあるT検定を実施した後、変化率、MFESについてKruskal-Wallis検定を用いて3群間の比較を行った。有意水準は5%とした。【説明と同意】対象者には事前に研究の目的・方法を書面、口頭にて説明し、本研究を含む運動機能測定に対し署名にて同意を得た。また、研究計画や個人情報の取り扱いを含む倫理的配慮に関しては、当院の倫理委員会での承認を得た。【結果】アンケート結果より、屋内転倒群9名(年齢:72.6±4.9歳)、屋外転倒群14名(年齢:71.8±7.6歳)、非転倒群130名(年齢:70.1±4.7歳)であった。各群のTUG、Dual Task TUG、変化率の値は、屋内転倒群:5.28±1.56秒、7.11±1.87秒、115.9±8.59%、屋外転倒群:6.35±1.59秒、6.82±1.79秒、107.2±9.06%、非転倒群:6.01±1.29秒、6.74±1.42秒、112.1±7.95%であった。各群ともに、TUGとDual Task TUGの間には有意な差が認められた(p<0.05)。3群間の比較では、変化率やMFESの全項目において有意差を認めなかった。【考察】本研究では、TUGとDual Task TUGとの比較において有意差が見られた点では、先行文献と同様の結果を示したが、転倒歴の有無により群分けをした各群間での有意差が認められなかった。つまり、本研究で用いたTUGと運動課題を付加したDual Task TUGの値から求められる変化率は、地域在宅高齢者において転倒予測因子とはなりえないことが考えられた。この理由として、今回対象とした地域在宅高齢者は自ら運動機能測定に参加された運動意識、身体機能の比較的高い方々であり、Dual Task TUGで用いた運動課題が注意配分に影響を与える因子として難易度が適切ではなかったのではないかと考えた。このことは先行研究で示された年代別のTUG測定値と比較することで裏付けられる。また今回の結果より、運動課題と認知課題が注意配分機能へ与える影響として、どのような差がみられるのかを検討していく必要性が示唆された。今後は対象者を増やしてデータの蓄積をし、年代別やより転倒の危険性が高い要支援・要介護、特定高齢者を対象とした検討、転倒予測を示すカットオフ値の算出などを課題としていく。【理学療法学研究としての意義】日常生活場面に特化した本評価法の妥当性の検討は、高齢者の転倒への意識を高めることで転倒予防に寄与し、より高い日常生活動作やQOLの維持に貢献できるのではないかと考える。

Journal

  • Congress of the Japanese Physical Therapy Association

    Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009(0), A4P2042-A4P2042, 2010

    JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

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