直線偏光近赤外線の星状神経節近傍照射が脳卒中後複合性局所疼痛症候群患者の麻痺側上肢血流動態に与える影響に関する検討

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著者

    • 照井 駿明
    • 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター機能訓練部
    • 中澤 明紀
    • 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター機能訓練部
    • 皆方 伸
    • 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター機能訓練部
    • 藤原 理佐子
    • 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター循環器内科
    • 熊谷 富美子
    • 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター臨床検査部
    • 佐藤 沙央理
    • 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター臨床検査部

抄録

【はじめに、目的】直線偏光近赤外線(LPNR)の星状神経節(SG)近傍照射は、交感神経活動を非侵襲的に抑制し得ることが指摘されている。この治療法は脳卒中患者などにみられる複合性局所疼痛症候群(CRPS)の神経損傷のないI型症例に対しても有効とされているが、十分な検討は行われていないのが現状である。本研究の目的は、LPNRのSG近傍照射が脳卒中後CRPS患者の麻痺側上肢血流動態に与える影響について検討することとした。【方法】当院回復期病棟脳卒中入院患者において、CRPS臨床用判定指標を用いて条件を満たした右視床出血2名、左被殻出血1名、右中大脳動脈領域の脳梗塞1名の計4名を対象とし、全症例に対して以下の2つの実験を実施した。なお、各実験の実施順序はランダムとし、各実験の間には1週間以上の間隔を空けて実施し、対象者に対しては目隠しを行い、LPNRが照射されているか否かは本人には分からないようにした。<実験1>15分間の安静背臥位保持(馴化)終了後、同一肢位にて麻痺側のSG近傍へのLPNR照射を10分間実施した。<実験2>馴化終了後、LPNRのSG近傍照射を伴わない安静背臥位保持(コントロール)を10分間実施した。測定項目としては、各実験の馴化終了時とLPNRのSG近傍照射およびコントロール終了時で以下の3項目を評価した。<評価 1>自律神経活動動態に関する指標として、心拍変動周波数成分であるLF/HF(交感神経活動の指標)を求めた。<評価 2>交感神経活動と関連した末梢循環動態の指標として、麻痺側手指皮膚温を測定した。<評価 3>麻痺側上肢血流動態の指標として、麻痺側橈骨動脈の血管径および最高血流速を超音波診断装置にて計測した。なお、評価は、内科医と臨床検査技師により行われた。【倫理的配慮、説明と同意】対象者に対しては、本研究の目的や本研究への参加の同意及び同意撤回の自由、プライバシー保護の徹底等について予め十分に説明し、書面による同意を得た。【結果】LF/HFについて、馴化終了時とLPNRのSG近傍照射終了時との比較では、LF/HFが平均36.0%減少した。これに対して、馴化終了時とコントロール終了時との比較では、平均42.9%増加した。麻痺側手指皮膚温について、馴化終了時とLPNRのSG近傍照射終了時との比較では、平均で0.2℃の上昇を認めた。これに対して、馴化終了時とコントロール終了時との比較では、平均0.1℃の下降を認めた。麻痺側橈骨動脈の血流動態指標について、馴化終了時とLPNRのSG近傍照射終了時との比較では、血管径が平均0.23mm増加、最高血流速が平均1.46cm/s増加した。一方、馴化終了時とコントロール終了時との比較では、血管径は0.1 mmの増加、最高流速は1.00cm/sの減少を認めた。【考察】CRPS患者の交感神経活動が疼痛に影響する機序は明確になってはいないが、疼痛により交感神経活動が活性化することにより侵害受容性である求心性C線維の閾値が低下し、疼痛が増悪する「痛みの悪循環」を招くとされている。今回、LPNRのSG近傍照射に伴い交感神経活動の指標であるLF/HFの減少や麻痺側手指皮膚温の上昇が認められた事に加えて、麻痺側橈骨動脈の血流動態指標の増加も認められた。このことから、LPNRのSG近傍照射により交感神経活動が抑制された結果、麻痺側上肢血流動態の改善が促された可能性が考えられる。今後は、脳卒中後のCRPS患者を対象としたLPNRのSG近傍照射の有効性について、症例数を増やし詳細な検討が必要と考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は、脳卒中後のCRPS患者に対するLPNRのSG近傍照射が交感神経活動を抑制し、麻痺側上肢血流動態を改善する可能性を示している。このことは、LPNRのSG近傍照射が、血流増加に伴う上肢の循環改善によりCRPS患者に多くみられる臨床症状、すなわち疼痛や浮腫などを改善し得る可能性を示唆するものである。本研究結果は、今後の発展性や臨床への波及効果などの観点から意義深いと考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012(0), 48100846-48100846, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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