体操選手における倒立時の筋活動様式  [in Japanese]

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【はじめに、目的】倒立は体操や飛込競技の演技で頻繁に行われる動作であり,高い点数を得るためには身体を一直線に保つ能力が必要とされる.倒立は上肢で体重を支持しながら重心をコントロールするため,立位姿勢とは異なった筋活動様式を示すと考えられる.そこで本研究では,体操選手の倒立姿勢と立位姿勢保持時の筋活動量を比較し,倒立姿勢時の筋活動様式を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は体操競技経験10 年以上の大学男子体操選手7 名とした.マット上で直立立位および倒立姿勢を3 秒間保持させた際の筋電図を測定した.倒立姿勢は実際の演技を想定し,できる限り身体を一直線にして静止させた.被験筋は右側の腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,胸部脊柱起立筋(第9 胸椎レベル),腰部脊柱起立筋(第3 腰椎レベル),大腿直筋,上腕三頭筋,広背筋であり,表面電極を貼付した.立位,倒立ともに姿勢が安定した1 秒間の筋活動量を,等尺性最大随意収縮時の活動量で正期化した%MVCを算出した.各筋において,立位と倒立時の筋活動量をWilcoxonの符号付順位検定を用いて比較した.なお,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいた倫理的配慮の下行った。被験者には口頭にて,実験の概要,方法,研究による危険性とその対処法,自由意志による同意であること,同意を示された方でもいかなる場合においても理由を問われることなく実験への同意を撤回することができること,個人の人権を擁護することを説明し,実験参加の同意を得られた後,実験を行った.【結果】腹直筋(立位:0.3 ± 0.1%MVC,倒立:6.5 ± 4.2"%MVC),外腹斜筋(立位:1.0 ± 0.4%MVC,倒立:6.4 ± 5.1"%MVC),大腿直筋(立位:0.6 ± 0.2%MVC,倒立:3.5 ± 2.2"%MVC),上腕三頭筋(立位:0.6 ± 1.0%MVC,倒立:13.5 ± 7.0"%MVC),広背筋(立位:0.5 ± 0.4%MVC,倒立:1.9 ± 1.3"%MVC)は倒立時の活動量が立位時よりも有意に大きかった.腰部脊柱起立筋(立位:4.7 ± 3.6%MVC,倒立:1.6 ± 1.2"%MVC)は立位時の活動量が倒立時よりも有意に大きかった.内腹斜筋,胸部脊柱起立筋に有意差は認めなかった.【考察】本結果より,倒立時には腹直筋,外腹斜筋,大腿直筋,上腕三頭筋,広背筋の活動量が大きかった.倒立時には上肢で体重を支持するため手関節および肩関節のトルクが大きくなることが報告されており(Kerwin DG and Trewartha G,2001),上腕三頭筋や広背筋など上肢筋の活動量が大きくなったと考える.また,倒立姿勢の重心をコントロールするために体幹・股関節の運動制御が必要とされ,腹直筋,外腹斜筋,大腿直筋の活動量が大きくなったと考える.上級者の倒立は初心者よりも股関節伸展方向への角度変位量が少ないことが示されていることから(Gautier G et al., 2009),体幹・股関節屈筋群を活動させて,安定した倒立姿勢を維持している可能性が示唆された.一方,腰部脊柱起立筋は有意に立位で活動量が大きく,胸部脊柱起立筋も有意差は認めなかったが,立位で活動量が大きかった(立位:2.6 ± 0.8%MVC,倒立:1.7 ± 1.1"%MVC).脊柱起立筋群は立位姿勢においては抗重力筋として活動するが,倒立姿勢では抗重力作用を必要としないため活動量が減少する可能性が示唆された.以上から,体幹筋群において立位では体幹背面筋群が活動し,倒立では体幹前面筋群の活動量が大きくなる傾向を示した.今後は,重心位置やアライメントを計測し,抗重力作用と筋活動との関連を明らかにしながら,身体を一直線に維持するための倒立技術を解明する必要がある.【理学療法学研究としての意義】倒立は体操競技だけでなく様々な競技のトレーニング現場で用いられている.本研究では一流体操選手の倒立筋活動を明らかにしたことから,スポーツ現場において倒立パフォーマンスを向上させるための有用な情報になると考える.

Journal

  • Congress of the Japanese Physical Therapy Association

    Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012(0), 48101694-48101694, 2013

    JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

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