理学療法学生の進学動機や職業同一性との関連およびその変化

この論文にアクセスする

著者

抄録

【はじめに、目的】青年期における職業選択は重要な課題である一方、大学在学期は心理・社会的モラトリアムであるとも述べられており、学生は学生生活の中で職業を選択していくことになる。しかし理学療法学科学生は受験時の進路選択が職業とつながっており、入学と同時に専門職へと自我を同一させていくことが求められる。本研究では理学療法学生を対象として、進学動機や職業同一性、またその変化の有無を横断的研究によって明らかにすることを目的とした。【方法】アンケートにて回答を求めた.アンケート内容は1)進学動機尺度2)学生用職業的同一尺度3)入学時・現在のギャップ4)ギャップが変化したきっかけとそれによる志望度の変化5)現在の療法士に対する志望度とした.1),2)は5段階で3),4)は自由回答,5)は-10から+10の20段階で回答を求めた。分析方法:各尺度についての分析は因子分析を用い、各尺度の推定値算出には、クロンバックのα計数を用いた。下位尺度ごとに合計、平均したものを下位尺度得点とした。進学動機と職業同一性との関連は説明変数を進学動機、目的変数を職業同一性として重回帰分析を行った。学年ごとの進学動機、職業同一性の各尺度得点の比較にはt検定を用い、ギャップ度の変化因子はそれにより志望度がプラスに転じたもののみを抽出し用いた。いずれも有意水準は5%未満とした。調査対象者:対象は理学療法士養成校2校に在学する学生のうち、調査の前に趣旨を説明し同意を得られた者383名とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象者には,事前にアンケートの目的と方法を文面及び口頭で十分に説明し,参加の同意を得た。また,本研究は埼玉県立大学研究倫理委員会の承認を得た。【結果】(1)進学動機 主因子分析の結果、固有値1以上で5因子を抽出した。各因子は「自己可能性の追求(α=.87)」、「無目的・漠然(.85)」,「他律的動機(.85)」,「適性考慮(.81)」、「専門価値の追求(.79)」とした。 (2)職業同一性 主因子分析の結果、固有値1以上で4因子を抽出した。各因子は「医療職としての社会的同一性(α=.92)」、「医療職としての自己成長感(.87)」、「専門職像の明確さ(.81)」、「医療職集団の中での対他的同一性(.77)」とした.3)進学動機・職業同一性の相関 重回帰分析の結果、「無目的・漠然」と「医療職としての自己成長感」「専門職像の明確さ」に負の相関を、「適性考慮」と「医療職としての社会的同一性」「医療職としての自己成長感」に正の相関を強く認めた(p<0.001)。その他「他律的動機と医療職集団の中での対他的同一性」で正の相関を(p<0.01)、「自己の可能性追求」と「医療職としての自己成長感」「専門職像の明確さ」、「無目的・漠然」と医療職集団の中での対他的同一性」の間で正の相関を認めた(p<0.05)。4)学年ごとの比較 進学動機の下位尺度得点はすべての学年、項目において有意差を認めなかった。職業同一性について、4年生が「専門職像の明確さ」が全学年と比較して有意に高かった。また、1年生と4年生の比較では全項目において4年生が有意に高くなった。5)ギャップ度の検討 自由回答で得られた回答のうち1年生では62%を勉強に関する項目が挙げられたのに対し、4年生では68%が実習に関する項目が挙げられた。【考察】1)進学動機について 本研究では第1因子に「自己可能性の追求」が認められた.一方で「無目的・漠然」、「他律的動機」も因子に認められた。これらより理学療法について知識を持ち、それが自己の適性と沿うものかどうかを入学前に考慮した学生と、他者からのすすめや漠然とした意識で入学した者の二峰性をとっているのではないかと推察された。よってそれぞれの進学動機の学生に対応した指導や支援が必要となるのではないかと思われる。2)進学動機と職業同一性の関連について 志望動機の「無目的・漠然」、の高い者は、「医療職としての自己成長感」「専門職像の明確さ」が低かった。一方で「適性考慮」が高値となった者は,「医療職としての社会的同一性」「医療職としての自己成長感」が高かった。3)学年比 職業同一性下位尺度得点は全ての項目において4年生が高くなった。志望度がプラスに転じたきっかけとして多くの4年生が実習と回答していたことから実習などの経験が重要な因子となると考えられた。そのため、早期に実習を行うことで早い時期での職業同一性の統合につながるのではないかと推察される。【理学療法学研究としての意義】理学療法士養成校が多い現在,途中退学者やつまづきを感じる学生は少なくないと推察される.学生同士のコミュニケーションやフォローによりこれらの学生が勉学に励むことができるのではないかと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012(0), 48102100-48102100, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

各種コード

ページトップへ