Commodification of rural spaces in the stone wall strawberry region

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  • 石垣イチゴ地域にみる農村空間の商品化

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日本の農業と農村においては、1990年代に入って大きな構造的変化がおきた。それは、農業が引き起こす環境問題の深刻化や農業の担い手不足、米の生産調整の強化、輸入農産物との競合の激化、食料自給率の低下、農村自体の弱体化などに象徴されるが(田林・井口, 2005)、さらにはこれまで基本的に農業生産の場としてみなされてきた農村が、余暇や癒し、文化的・教育的価値、環境保全など、その他の機能をもつ場として捉えられるようになってきた(立川, 2005)。これは生産主義からポスト生産主義への変化と考えられ(Ilbery, B. and Bowler, I., 1998)、一般には農村空間の生産空間から消費空間への転換、あるいは「商品化する農村空間」として捉えることができる(Cloke, 1993;Perkins, 2006)。  静岡市増地区ではそれまでの半農半漁の生活から大正期にイチゴや野菜、果樹などの商品作物に依存する生活に転換した。そして1930年代には高級嗜好品である促成イチゴを中心にした生業になり、第2次世界大戦中の中断はあったが、この状況は1960年代まで続いた。ところが、ビニールハウスなどに代表される技術革新の結果、イチゴの促成栽培は首都圏を中心に広い範囲に拡大し、久能地域の石垣イチゴの優位性にかげりが出てきた。そこで、折からの高度経済成長にともなう観光ブームもあって、イチゴの観光農園経営を導入することになった。1960年代までの「生産空間としての農村空間」という状況から、農村空間そのものの価値を売り出すようになった。すなわち「農村空間の商品化」が進んだ。石垣イチゴ地域における農村空間の商品としてのセールスポイントとしては、古くからの自然環境の活用(環境的意義)と石垣イチゴという知名度(教育的意義)、ユニークな景観の中でのスローな雰囲気(余暇と癒しの意義)があげられ、それらは温暖な冬の気候、海に向かった南斜面という展望の良さ、長年の技術的蓄積に基づくイチゴの味の良さ、親しみのある接客姿勢、周辺観光地との組み合わせ、大都市や中小都市への近接性の高さなどの条件によって支えられている。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205593288320
  • NII Article ID
    130004596634
  • DOI
    10.11518/hgeog.2007.0.209.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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