ニホンザル特定鳥獣保護管理計画の10年

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抄録

 ニホンザルを対象とした特定鳥獣保護管理計画がスタートしてすでに 10年が経過した.これまでに東日本を中心とした 19県において特定計画が実施されており,すでに第三次計画が進められている県も多い.特定計画がスタートする以前の 1980~ 90年代と比べると,あきらかに個体群モニタリングの実施体制は整ってきたし,各種の被害防止対策や個体群管理の手法にも,大きな進歩があった.ただ全国的に見わたしてみれば,まだまだ不十分な点は多い.ニホンザルの場合は,数十頭からの個体が群れをなして行動し,且つ一定の行動域を持った群れが連続して分布しているのが普通である.またニホンザルは樹上性であることから三次元的な対策が必要であり,高度な知的能力を有する故に被害対策にも高度な技術と集中した努力が求められる.ニホンザルの個体群管理,農林業被害軽減のためには,単なる個体数調整だけでは不十分である.明確な理念とアイデアをもった企画実現的な施策が求められる.また年間の野生ニホンザル捕獲数はすでに 2万頭を超しているが,殺生を好まない風習もあって,必ずしも必要なところで計画的に捕獲されているというわけでもない.こうした実情が,ニホンザルの個体群管理,ひいては実施されている特定計画の実態,具体的な成果や問題点,将来への課題を非常に見えにくくしている.<br> 本シンポジウムは,ニホンザルに関する特定計画この 10年の大まかな総括を行い,現在の到達点とさまざまな課題を整理し,今後のニホンザル個体群管理をより有意義なものにしていくことを目的に計画された.まず,全国的な取り組み状況とその概要,その問題点と課題についてのまとめを,話していただいた上で,その中でも具体例として取り上げられている宮城県と兵庫県の例を,それぞれの現場に即して,より具体的に紹介していただく.また可能であれば,その他の県や地域についても,具体例をコメントしていただくことにより,全国的なニホンザル保護管理計画の現状に関する総括を行っていきたい.また近年,市街地,都市部に進出してくるニホンザルの群れやハナレザルの問題が各地で大きく取り上げられるようになった.こうしたニホンザル群・個体に対する管理上の問題についても,コメントしていただき議論を深めたい.<br><br>   発表者 <br>   「これまでのニホンザル特定計画の概要と問題点」<br>    滝口正明(自然環境研) <br>   「宮城県のニホンザル個体群管理の事例から」<br>    宇野壮春(東北野生動物保護管理センター) <br>   「兵庫県のニホンザル個体群管理の事例から」<br>    鈴木克哉(兵庫県立大)<br><br>   コメント <br>   「都市部に進出したニホンザルの管理とその問題点」<br>    江成広斗(山形大学)

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680610333696
  • NII論文ID
    130004654738
  • DOI
    10.14907/primate.29.0.44.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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