九州で初めて生息が確認されたニホンウサギコウモリ Plecotus sacrimontis について

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抄録

 これまで,九州地域ではウサギコウモリ属(Plecotus)は記録されていなかった.今回,初めて大分県で生息が確認されたので報告する.大分市野津原町の廃坑跡と横坑で,2010年 3月 4日と 2011年3月 14日に各雄 1頭(前腕長 38.8 mmと 40.3 mm)のウサギコウモリ属の特徴を示す個体が捕獲確認された.いずれの個体も冬眠のねぐら場所として利用していたと考えられる.ねぐら場所の気温は,各 14.3℃と 12.1 ℃で比較的高い温度域を選択していた.さらに,2012年 5月 23日にも同廃坑跡(ねぐら場所 15.2 ℃)で雄 1頭(前腕長 41.1 mm)の生息が確認され,活動期のねぐら場所としても利用していることが判明した.前腕長のサイズや体重 7.3 ~ 9.8 g から,本州産に比べてやや小型であった.一方,2013年 3月 27日に野津原町の捕獲地点から北東へ約 40 km離れた大分県玖珠町の隧道 (洞内気温 7.7℃ )で,雌 1頭(前腕長 41.8 mm)の生息が確認された.また,2010年 3月の捕獲個体から飛膜片を採取し,ミトコンドリア DNA Cyt-b 遺伝子の配列を北海道および本州産と比較した結果,非常に高い相同性を示し,分子系統学的に単系統であることが示された.以上の結果から,これらの個体はニホンウサギコウモリ Plecotus sacrimontisと同定された.頭骨の形状についても言及する予定である.

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  • CRID
    1390001205633616256
  • NII論文ID
    130004654745
  • DOI
    10.14907/primate.29.0.94.1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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