多層カーボンチューブとアスベストの経気管肺内噴霧投与による胸膜中皮の増殖

DOI
  • 津田 洋幸
    名古屋市立大学 津田特任教授研究室
  • 徐 結苟
    名古屋市立大学 津田特任教授研究室
  • 酒々井 真澄
    名古屋市立大学 大学院医学研究科分子毒性学分野
  • 二口 充
    名古屋市立大学 大学院医学研究科分子毒性学分野
  • 深町 勝巳
    名古屋市立大学 大学院医学研究科分子毒性学分野
  • 菅野 純
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部
  • 広瀬 明彦
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター総合評価室

書誌事項

タイトル別名
  • Mesothelial proliferation by intra-pulmonary dosed multiple walled carbon nanotube and asbestos

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抄録

線維状ナノマテリアルのMWCNT-M,MWCNT-N(MWCNTs)および青アスベストCrocidolite(CRO)を気道より肺内に噴霧投与し,肺,胸膜病変とマクロファージ(MP)の関与を観察した。 方法:1)10週齢の雌SDラットに,0.1%Tween含有生食に検体を20または500micro-g/mLに懸濁し,0.5mLを肺内に9日間に5回噴霧し(計0.05または1.25mg/ラット),最終投与6時間に開腹後,横隔膜経由でDMEM液10mLを胸腔に注入後洗浄液を採取した。洗浄液の細胞数ならびに洗浄液円沈細胞ペレットを固定したパラフィンブロック,肺,肝,腎,脾,脳,等の切片の偏光顕微鏡と電顕観察を行った。2)胸腔洗浄液および,チオグリコレートにて誘導して単離した初代培養正常ラット肺MPにMWCNTsとCROを加えた培養上清について,ヒト中皮腫細胞の増殖活性を調べた。 結果:1)肺胞ではMPがMWCNTsとCROを同様に貪食していた。胸膜洗浄液には主としてMPからなる炎症細胞が浸出し,対照群で7.35/104mlに対して,MWCNT-Nは11.20,MWCNT-Mは13.95,CROは12.13で有意に(p<0.001~0.05)増加した。胸腔洗浄液ペレットと各臓器ではいずれの検体もM<P内に観察され,また縦隔リンパ節,肝,腎,脳にも少数見出された。さらに,臓(肺)側胸膜中皮細胞の過形成増殖巣が発生し,中皮8個以上からなる過形成巣数のPCNA値が9~10倍(p<0.001)に増加した。2)MP初代培養上清と胸腔洗浄液上清はヒト中皮腫細胞に対する増殖活性(1.2~1.4倍)を示した。 まとめ: MWCNTとCROと同様に肺から胸腔,全身に移動して,とくに胸膜腔では中皮の増殖活性を示すことが明らかとなった。この変化は悪性中皮腫発生の初期変化とも考えられる。

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