ウイルス学的解析が可能であったHBs抗原陰性B型急性肝不全の1例

書誌事項

タイトル別名
  • Virological analysis of hepatitis B virus derived from patients who developed acute liver failure during HBs antigen negative phase
  • 症例報告 ウイルス学的解析が可能であったHBs抗原陰性B型急性肝不全の1例
  • ショウレイ ホウコク ウイルスガクテキ カイセキ ガ カノウ デ アッタ HBs コウゲン インセイ Bガタ キュウセイ カンフゼン ノ 1レイ

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抄録

症例は41歳男性,40℃の発熱と黄疸を主訴に来院した.血液検査にて肝機能異常およびPT値の低下(35%)を認め,急性肝不全と診断した.受診時のHBs抗原は陰性であったが,IgM型HBc抗体強陽性,HBV DNA陽性より,急性肝不全の原因がB型肝炎ウイルス(HBV)の成人初感染であると診断した.診断時にHBs抗原が陰性であった原因を解析するため,HBVの塩基配列決定を試みた.ウイルス量低値によりHBVの全塩基配列を決定することはできなかったが,S遺伝子の配列を決定することが可能であった.エンベロープ蛋白の抗原決定基‘a’のアミノ酸配列を解析したが,HBs抗原の検出系に影響を与えるようなアミノ酸変異は認めなかった.以上の解析より,エンベロープ蛋白のアミノ酸変異が原因というよりは,急速な免疫反応により早期にウイルス排除が起こりHBs抗原が検出感度以下となったことが原因と考えられた.本症例は,HBs抗原陰性のB型急性肝炎において,HBVの塩基配列が決定できた貴重な症例である.HBVによる急性肝炎を疑った際にはHBs抗原が陰性であっても積極的にIgM-HBc抗体を測定する必要があると考えられた.

収録刊行物

  • 肝臓

    肝臓 55 (7), 378-383, 2014

    一般社団法人 日本肝臓学会

参考文献 (8)*注記

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