脳動脈瘤の発生要因・自然歴・スタチンの可能性

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  • The Causes and Natural History of Intracranial Aneurysms : A Future Role for Statins?

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抄録

 UCAS Japan, SUAVe研究などの大規模研究により, 本邦の脳動脈瘤の自然歴が明らかになってきた. SUAVe研究は5mm未満の未破裂脳動脈瘤の観察研究であり, 年間破裂率は0.54%, 破裂の危険因子は若年, 4mm以上, 高血圧, 多発であった. UCAS Japanは, 6,697の未破裂脳動脈瘤を登録し, 治療もしくは破裂までの期間を観察した研究で, 年間破裂率は0.95%, 破裂の危険因子は大きさ, 部位, ブレブの存在であった. 欧米人を中心とするISUIAコホートと比較すると, 同じ大きさであっても本邦の未破裂脳動脈瘤の破裂率は欧米より高いこと, 部位に関しては欧米と同様IC-Pcomの破裂率が高いが, 本邦ではAcomの破裂率も高いことが明らかになった. 脳動脈瘤の発生要因に関しては, 動脈瘤壁の慢性炎症の重要性が示されてきた. 血管壁におけるhemodynamic stressによって, NF-κBの活性化などの内皮細胞の炎症が惹起され, マクロファージを主体とした炎症細胞が血管壁に集簇する. マクロファージがMMPなどを分泌することにより細胞外マトリックスの分解が亢進し, 動脈瘤壁の退行変性が進行するものと考えられている. スタチンはこれらの炎症カスケードを抑制し, ラット脳動脈瘤壁の退行変性を抑制することが証明されている. スタチンがヒト脳動脈瘤の増大や破裂を抑制する効果があるかどうかを実証するため, 現在SUAVe-PEGASUS研究が進行中である.

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