練習休止期間中のメンタルプラクティスが未経験運動の短期的練習効果の維持に及ぼす影響  [in Japanese]

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【はじめに、目的】 メンタルプラクティス (以下,MP) とは,技能習得を目的として,運動イメージ想起 (以下,MI) を繰り返し実施することである。スポーツ選手などが外傷により練習を行えない場合,練習休止期間に選手のパフォーマンスが低下する。しかし,ダーツを課題とした研究結果から,経験のある運動が課題であれば,4週間の練習で向上した成績が,3週間の練習休止期間中にMPを行うことで維持されることが報告されている。それに対して我々は,全くの未経験である運動課題に対するMPの効果に着目し,MPが短期的な練習によって向上したパフォーマンスの維持に及ぼす影響を検証することを目的とした。【方法】 対象は健康な成人22名とし,剣道経験者は除外した。課題は未経験の運動として剣道の突き打ちを採用した。被験者はMPを2週間行う介入群と,2週間何も行わない対照群の2群に男女比を均等にした上で無作為に割りつけた (各群男性6名,女性5名)。介入群には,介入としてMPを2週間行わせた。MPでイメージさせる運動は,剣道の突き打ちとし,一人称的に行わせた。先行研究では,運動の非鍛練者が動画を用いたMIを行うことで,動画を用いないM1を行った時よりも運動に関連する皮質運動野領域の興奮性が増大したと報告されている。そこで本研究でも動画を用いたMIを採用した。対照群には,2週間突き打ちのことを考えないよう指示した。実験課題はGo/No go課題による剣道の突き打ちとした。Go/No go課題では,Goの指示が提示された時は壁に貼られた的に向かって突き打ちを遂行させた。No goの指示が提示された時は遂行させなかった。突き打ちの練習は2週間の介入前 (前ステージ) ,および介入後 (後ステージ) に実施した。前ステージでは,突き打ちの教示,安静,突き打ち10回を1セットとし,合計5セット繰り返した。後ステージでは突き打ちの教示を行わなかった。測定項目は的中心と打点間の距離とした。データ解析ではGoの試技を採用し,前ステージの1セット目と5セット目 (pre1,pre2) と後ステージ後の1セット目と5セット目 (post1,post2) を比較した。変数として,的中心と打点間の誤差の平均 (絶対誤差) とその標準偏差 (変動誤差) を算出した。またpre1に対する各測定時期の絶対誤差と変動誤差の変化率を算出した。統計学的解析として,絶対誤差と変動誤差,またそれぞれの変化率について,群と測定時期を要因とした二元配置分散分析を行った。ただし,絶対誤差と変動誤差については測定時期要因の水準をpre1,pre2とし,変化率についてはpre1を除くpre2,post1,post2とした。いずれも交互作用があった場合には単純主効果の検定を行った。有意水準は0.05とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。また,事前に研究内容等の説明を十分に行った上で,同意が得られた被験者を対象として実験を行った。【結果】 前ステージにおけるパフォーマンスの変化では,絶対誤差,変動誤差ともに両群で時期に主効果があり,pre1に対してpre2が減少した。また群と測定時期に交互作用がなかった。絶対誤差の変化率では,群と測定時期に交互作用があった。そして介入群ではpre2は58.3%,post1は60.0%,post2は63.9%であり,各測定時期において有意な変化がなかった。それに対し対照群では,pre2は69.8%,post1は88.0%,post2は60.8%で,pre2と比較してpost1で有意に増大し,post1と比較してpost2で有意に減少した。またpost1において,介入群と比較して対照群で有意に増大した。変動誤差の変化率では,群と測定時期に交互作用がなかった。【考察】 本研究結果から,両群において突き打ちのパフォーマンスは短期的な練習で向上した。そして,対照群では2週間間後にパフォーマンス低下が検出された。それに対して,介入群においてpre2で向上したパフォーマンスは2週間後も維持された。pre2でパフォーマンスが向上していたことから,前ステージ中に突き打ちが短期記憶されていたと考える。しかし,短期記憶は練習やリハーサルがないと忘却してしまう。本研究では,練習休止期間中のMPがリハーサルとなり,短期記憶の忘却を防いだことによって,介入群でパフォーマンスが維持されたと考える。以上より,練習休止期間にMPを行うことにより,全くの未経験の運動課題であっても,短期的な練習効果が維持される可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究により,MPが短期記憶の維持に貢献する可能性が示唆された。このことは,MPに臨床的有用性があることを示しているという点で,理学療法研究として意義深いといえる。

Journal

  • Congress of the Japanese Physical Therapy Association

    Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011(0), Aa0170-Aa0170, 2012

    JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

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