関節不動期間中の関節可動域運動の違いが坐骨神経周囲組織に与える影響  [in Japanese]

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Author(s)

    • 松崎 太郎
    • 金沢大学医薬保健研究域保健学系リハビリテーション科学領域
    • 音地 利亮
    • 金沢大学医薬保健学域保健学類理学療法学専攻
    • 佐藤 絵美
    • 金沢大学医薬保健学域保健学類理学療法学専攻
    • 寺島 未菜
    • 金沢大学医薬保健学域保健学類理学療法学専攻
    • 藤樫 和彦
    • 金沢大学医薬保健学域保健学類理学療法学専攻
    • 細 正博
    • 金沢大学医薬保健研究域保健学系リハビリテーション科学領域

Abstract

【はじめに、目的】 関節可動域制限の原因の一つとして神経系の可動性や柔軟性の低下が関与していることが考えられており,我々は先行研究(吉田ら,2009)において若年ラット膝関節拘縮モデルにおける坐骨神経周膜の肥厚および坐骨神経束と神経周膜の密着(神経周囲腔の消失)を報告し,これが神経の滑走を妨げている可能性を示した.そして第46回大会では,関節可動域運動(以下,ROM-ex)が坐骨神経周囲組織に与える影響について検討したが,不動期間中にROM-exを施行した群と上記の関節拘縮モデルで観察された組織像は同様のものであり,その原因として坐骨神経周囲組織へ加わる機械的ストレスが不十分であったためではないかと考察した.そこで今回,ラット膝関節不動モデルにおいて不動期間中に前回大会で用いたROM-exと坐骨神経にストレスのかかるROM-exの2種類のROM-exを施行し,それらの坐骨神経周囲組織に与える影響の違いについて病理組織学的に検討することを目的に実験を行った.【方法】 対象には9週齢のWistar系雄ラット18匹を用い,それを無作為にコントロール群(n=6),膝運動群(n=6),下肢運動群(n=6)の3群に分けた.3群共にラットに麻酔後,右膝関節をキルシュナー鋼線と長ねじを使用した創外固定を用いて膝関節屈曲120°で不動化した.この際,股関節,足関節に影響が及ばないように留意し,ラットはケージ内を自由に移動,水,餌は自由に摂取可能とした.膝運動群,下肢運動群は不動化処置の翌日より腹腔内にペントバルビタールナトリウム溶液を40mg/kg注射して深麻酔下で膝関節に対しROM-exを行い,ROM-ex時以外の期間は不動化を維持した.ROM-exは2群で異なる運動を実施した.膝運動群は膝関節屈曲位を5秒間保持し,次にバネばかりを使用して右後肢を体幹と平行に尾側へ約0.6Nで牽引し5秒間保持した.一方,下肢運動群は坐骨神経にストレスが加わるように体幹より120°腹尾側方向へ膝運動群と同様に約0.6Nで牽引し5秒間保持した.これらの運動をそれぞれ3分間連続して実施することを週に6回,2週間施行した.コントロール群はROM-exは行わずに自然飼育を行った.実験期間終了後,両群のラットをジエチルエーテルにて安楽死させ,その後,可及的速やかに右後肢を股関節より離断し標本として採取した.採取した下肢は10%中性緩衝ホルマリン溶液にて組織固定を行い,次いで脱灰液を用いて脱灰を4℃にて72時間行った.その後,大腿骨の中間部にて大腿骨に垂直に切断し大腿部断面標本を採取した.5%硫酸ナトリウム溶液で72時間の中和後,パラフィン包埋して組織標本を作製した.作製したパラフィンブロックをミクロトームにて約3μmにて薄切した.薄切した組織切片はスライドガラスに貼付し,乾燥後にヘマトキシリン・エオジン染色を行い封入した.観察部位は大腿中央部の坐骨神経周囲組織とし,光学顕微鏡下に病理組織学的に観察した.【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は金沢大学動物実験委員会の承認を受けて行われたものである.【結果】 膝運動群,コントロール群とも全例で坐骨神経内の各神経束は神経周膜と密着する傾向を示し,神経周囲腔の消失が観察された.また神経周膜には線維性の肥厚も両群全例で認められた.一方,下肢運動群は全例で神経周囲腔を認め,神経周膜には他群と同様に線維性肥厚が観察された.ラット膝関節の伸展制限は膝運動群が平均51.0°,下肢運動群が平均49.0°,コントロール群は平均77.0°であった.【考察】 今回,坐骨神経に伸張ストレスの加わる方法にてROM-exを行った結果,神経周膜と神経束との間に神経周囲腔が観察された.これは神経の滑走が神経周膜と神経束との間で生じている可能性を示唆するものであると考えられる.一方で,神経周膜の線維性肥厚については下肢運動群でも他2群と同様に認められた.線維性肥厚を呈している神経周膜ではコラーゲン線維の架橋結合が形成されている可能性が考えられるが,今回用いたROM-exは神経周膜自体には影響を及ぼさないものと思われた.【理学療法学研究としての意義】 臨床場面において使用頻度の高い治療手段であると思われるROM-exが坐骨神経周囲組織に与える影響について病理組織学的に観察・検討することにより,神経滑走性に対するROM-exの治療効果やその運動方法などの妥当性に対して示唆を与えうると考えられる.

Journal

  • Congress of the Japanese Physical Therapy Association

    Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011(0), Ab0456-Ab0456, 2012

    JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

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