起立性調節障害様の症状と日常生活状況の関連

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著者

    • 高橋 精一郎
    • 国際医療福祉大学大学院 保健医療学専攻 理学療法学分野
    • 矢倉 千昭
    • 聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 理学療法学科
    • 後藤 純信
    • 国際医療福祉大学大学院 保健医療学専攻 作業療法学分野
    • 森田 正治
    • 国際医療福祉大学大学院 保健医療学専攻 理学療法学分野
    • 久保下 亮
    • 国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部 理学療法学科

抄録

【はじめに、目的】 起立性低血圧に関連した病態の一つである起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation;OD)は,起立時に心臓,脈管などの循環系が適切に反応しないことにより,立ちくらみ,動悸,めまいなどの症状を呈する.このようなOD様の症状を示す者は,無症状の者と比較してQOLが低下すると言われている.OD様症状は,発達に伴う自律神経の不安定に起因するといわれているが,食事や睡眠,運動などの生活状況や社会的背景もOD様症状の発症に関与するといわれている.しかし,OD様症状と生活状況の関わりについて詳しく調査した報告は少なく,不明な点が多い.そこで,本研究の目的は,18-22歳の学生を対象にOD様症状の発生頻度を調査し,OD様症状と生活状況の関連について検討することである.【方法】 対象は大学生の男女129名(男性54名,女性75名),平均年齢20.0±1.3歳であり,基礎疾患(鉄欠乏性貧血など)を有する者,失神を訴える可能性のある不整脈,心肺疾患を有する者は除外した.OD様症状の有無は,OD診断基準の大症状,小症状を含めた質問紙を使用し,シェロングの起立試験の結果と合わせて判定し,大症状3以上,大症状2+小症状1以上,大症状1+小症状3以上あり,ほかの器質性疾患が除外された者をOD様症状有群,それ以外の者を無群に分類した.シェロング起立試験における血圧測定は自動電子血圧計(HEM-7420,オムロン社)を用い,収縮期血圧,拡張期血圧,脈拍を測定した.測定部位は右上腕とし,マンシェットおよび血圧計が心臓と同じ高さのレベルで測定した.プロトコールは,10分間の安静背臥位後に起立前の血圧を3回測定し,そのあと急速に起立し,起立直後(30秒以内),その後1分おきに血圧測定した.注意事項として起立試験中は,足趾や足関節を動かさないように説明し,気分不良などにより起立試験に耐えられない場合は起立試験陽性とした.測定条件として,測定前日は飲酒や過度の運動を禁止し,測定当日は測定2時間前から朝食や飲水,測定する1時間前から喫煙を禁止した.測定時間帯は午前中とし,室温は24-26℃に設定した.生活状況に関する質問は,健康生活についての問診票Questionnaire about the healthy life(以下,QHL)(道場ら,1983)および生活活動点数チェック票Check list of physical activities in the daily life(以下,CPA)(波多野ら,1993)を使用し, その他,世帯状況,過去のOD症状の有無と頻度,睡眠時間を調査した.QHLは,食事と栄養,仕事と休息,身体の管理,運動とスポーツ,こころの健康,社会性の6項目,50設問からなるライフスタイルを調査する質問紙であり,「はい」「いいえ」の2件法で回答し,健康生活で望ましい回答の場合は1点が加算される.0点から50点までの得点範囲であり,高値を示すほど良好で健康的な生活であることを示す.またCPAは,通勤・買い物,外出,仕事や家事,運動とスポーツ,レクリエーションの5項目, 7設問からなる日常生活での身体活動を調査する質問紙であり,合計点は,0点から70点までの得点範囲であり,高値を示すほど高い身体活動量であることを示す.その他,身体調査として身長,体重を測定しBMIを算出した.統計解析は,OD様症状の有無における性差はカイ二乗検定,その他の基本特性とCPAおよびQHLの比較はMann-WhitneyのU検定を用い,p<0.05をもって有意とした. 【倫理的配慮、説明と同意】 全ての対象者に対し,事前に書面にて研究内容について説明し,同意を得た上で実施した.本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会の承諾を得て研究を実施した(承認番号11-1).【結果】 OD様症状の有無の比較では基本特性では性差のみに有意差があり,OD様症状有群は有意に女性の人数が多かった.OD様症状の有無における睡眠時間およびCPA点数の比較において有意差はなく,OD様症状の有無におけるQHL点数の比較については,食事と栄養の項目以外の仕事と休息,身体の管理,運動とスポーツ,心の健康,社会性の5項目において,OD様症状有群はOD様症状無群よりも有意に低い値を示し,合計得点でも有意に低い値を示した.また,今回対象となった大学生は独居者が129名中86名と半数以上を占めていた.【考察】 先行研究では,OD様症状は,食事や睡眠,運動などの生活状況や社会的背景も関与することが指摘されており,本研究においても,OD様症状有群は無群よりもQHL合計点数が低く,健康的でない生活習慣を有していることが示された.OD様症状の有無で有意差がなかった食事と栄養の項目については,今回対象となった大学生は独居者が多く食生活が乱れやすいことから,差が出にくかったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 OD様症状と日常生活状況との関連について検討することは,OD様症状の発症と生活状況や社会的背景の関係を明らかにするための一助となると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011(0), Db0547-Db0547, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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