ビギナーズセミナー1  全身性エリテマトーデスにおける病態の理解と重要臓器病変の治療方針

  • 保田 晋助
    北海道大学大学院医学研究科 免疫・代謝内科学

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抄録

全身性エリテマトーデス(SLE)は,免疫異常を背景として,発熱・皮疹・関節炎にはじまり漿膜炎・血液障害・糸球体腎炎・中枢神経障害などの多彩な臓器病変を合併する全身性自己免疫疾患のプロトタイプである.病態については,複数の疾患感受性遺伝子を背景に環境因子が作用して発症し,T細胞シグナル分子異常,B細胞活性化と自己抗体の産生,抗原提示細胞の機能異常,インターフェロンシグネチャーといったサイトカイン産生異常が知られている.治療に関しては,個々の患者で重症度が大きく異なること,若年女性に好発するため妊娠・出産などのライフイベントへの影響を考慮しながら診療に当たることが求められる.ループス腎炎に対する寛解導入療法に関しては,世界的にはIVCYまたはミコフェノール酸モフェチルが選択されるが,本邦では後者が使用できず,またカルシニューリン阻害剤の位置づけも曖昧である.中枢神経ループスについては診断・治療法がさらに曖昧であり,ステロイド治療開始後の発症についても対応に難渋することがある.最重症の肺胞出血では早期に免疫抑制療法と血漿交換療法を導入することが必要である.難治性の血球貪食症候群では感染症との鑑別が最も予後を左右する.米国では新規治療薬としてベリムマブが承認されたが,他の治験薬はことごとくエンドポイントを達成せず,今後の症例選択を含めた治験デザインの改善が望まれる.

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