非リウマチ性弁膜症の多様性に関する研究

  • 齋藤 文洋
    順天堂大学医学部内科学教室循環器内科学講座心臓血管病理学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • A study of heterogeneity of non rheumatic valvular disease
  • -pathologicalanalysisofsurgicallyexcisedvalves-
  • -弁膜症外科切除弁組織の病理学的分析-

抄録

背景と目的: 本邦では非リウマチ性疾患が増加し, 弁形成術などの進歩は, 弁膜疾患のより詳細な病理学的理解を求めている. しかし, 本邦での弁膜疾患の病理形態学的検討は少なく, 特に外科切除弁の報告はほとんどない. そこで, 当研究室にて検索された外科切除弁所見を検討し, 考察を加えた. 対象と方法: 1987年から1994年までに心臓血管研究所付属病院にて外科的に切除された弁膜疾患連続181例中, 心エコー図検査および組織標本の検討が可能であった151例179弁を対象とした. 術前心エコー図で逆流所見のみのものを純逆流症, その他を狭窄症とし, 弁交連部の癒合の有無でリウマチ性・非リウマチ性をわけ, 年齢分布, 基礎病変, 組織・形態的特徴について検討した. 結果: 79例 (52.3%) が非リウマチ性で, 大動脈弁49・僧帽弁36・二弁置換6例であった. 年齢分布は男性で30歳代から増加し, 女性は70歳代が頂点の一峰性分布を示した. 基礎病変は, 大動脈弁純逆流症で感染性心内膜炎9例・逸脱症8例, 他は大動脈弁輪拡大・大動脈炎・ベーチェット病・結合織病・大動脈瘤・解離性大動脈瘤各1例であった. 大動脈弁狭窄症は二尖弁が25例中19例を占めた. 僧帽弁は36例中35例が純逆流症で, 感染性心内膜炎8・肥大型心筋症1・虚血性心疾患1・動脈管開存症2・僧帽弁逸脱症24例で, 僧帽弁逸脱症はさらに腱索断裂15 (7例は腱索欠如合併) ・ループ腱索5・腱索欠如7・弁逸脱 (狭義) 4例と多彩で, 弁逸脱の2例に炎症後変化を認めた. リウマチ性弁膜症は2弁置換が多く, 30歳代以下の手術例はほとんどなかった. 結論: 非リウマチ性弁膜疾患の基礎病変は多岐にわたり, 大動脈二尖弁・石灰化弁・僧帽弁逸脱症ではループ腱索・腱索欠如および弁膜炎後変化などであった. ループ腱索・腱索欠如は腱索断裂後, 二次的に発症する可能性がある.

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参考文献 (19)*注記

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