公衆衛生学を考える

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  • Note on public health

抄録

医師国家試験の根拠は医師法第9条『医師国家試験は, 臨床上必要な医学および公衆衛生に関して, 医師として具有すべき知識および技能について, これを行なう』にある. すなわち, 基礎医学や臨床医学を含む《医学》という言葉と対置されて《公衆衛生》がある. よい医師の必要条件は, 正しく必要な医学知識をもち, 十分な医療の技術をもつ, さらに医療の技術だけではなく良い態度で患者さんやスタッフに接することができることにある. 知識・技術・態度という習得した成果を適用する場面を考えると, それは必ずしも医療機関には限らない. かかわる対象は病める個人に限らない. そこに《公衆衛生》の役割がある. 生物学的問題としては同一であっても, 社会によってその意味は異なる, というのが社会医学の考え方である. 個人の健康を医療が担当するとすれば, 社会に生活する人々の集団の健康を担当するのが《公衆衛生》である. 社会を健全に動かすために, さまざまな領域に働きかけ, 人材や予算を活用・動員して, 結果として人々の健康を改善し, 健康の増進をする. 公衆衛生学は〈疫学〉と〈人類学・社会学〉と〈政治経済学〉の良いミックスである. 健康についての量的把握と, 文化と人についての質的理解, 世の中の動きと人間関係を掌握する. それが人々の健康を考え, 研究し, 対策を実践していくための出発点である. このミックスを消化しておくことは, よい医師であるための必要な条件でもあろう.

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