多発性硬化症における脳脊髄液T細胞ケモカイン受容体解析

  • 佐藤 和貴郎
    独立行政法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所免疫研究部

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タイトル別名
  • Chemokine receptor expression of T cells in the cerebrospinal fluid of relapsing multiple sclerosis

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抄録

多発性硬化症(Multiple Sclerosis: MS)は中枢神経系の慢性炎症性脱髄を特徴とする臓器特異的自己免疫疾患である.再発期と寛解期があり,再発にはT細胞が重要な役割を果たしている.中でもIFN-γを産生するTh1細胞とともにIL-17の産生を特徴とするTh17細胞の病原性が近年注目されている.Th1細胞やTh17細胞などのヘルパーT細胞サブセットはそれぞれ特徴的なケモカイン受容体を発現する.Th1細胞はCXCR3やCCR5陽性,Th17細胞はCCR2陽性CCR5陰性およびCCR4陽性CCR6陽性を特徴とする.再発寛解型MS患者のCD4+T細胞におけるCCR2, CCR4, CCR5, CCR6の発現をフローサイトメトリーで調べたところ,末梢血CD4+ T細胞における各分画の頻度は健常者あるいは疾患コントロールと比較し有意な増加や減少を認めなかった.しかし再発期MS患者の脳脊髄液ではCCR2+CCR5+細胞の頻度が末梢血中の頻度と比較し疾患特異的に増加していた.同細胞は活性化によりIFN-γとIL-17の両者を産生,また血液脳関門の破綻に関わるMatrix-Metalloproteinase-9(MMP-9)の高発現や炎症惹起蛋白Osteopontin(OPN)の高発現,さらに血液脳関門モデルの高い通過能をもっていた.このことから再発時に「先兵」として中枢神経系に浸潤しやすい細胞と考えられた.複数のケモカイン受容体の発現パターンを調べることにより,疾患に関連する重要なリンパ球分画を同定できる可能性がある.

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