<b>四川大地震被災地における中国NGOの救援活動</b>

DOI
  • 陳 頴
    Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University
  • 杉万 俊夫
    Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University

書誌事項

タイトル別名
  • <b>Relief activities of a Chinese non-governmental organization for victims of the Sichuan huge earthquake in 2008</b>
  • 「NGO備災センター」の事例

抄録

本稿は、2008年5月に発生した中国・四川大地震で設置された仮設住宅コミュニティ(武都コミュニティ)において、あるNGO(NGO備災センター:略称DPC)が展開した救援活動を、発災3ヶ月後から15ヶ月間にわたって参加観察した現場研究の速報である。<br> 死者約7万人を含む4,600万人以上の被災者を出した四川大地震の直後から、政府と軍隊による救援活動が展開された。しかし、一方では、多くの市民や民間団体による救援ボランティア活動も行われた。15年前に日本で起こった阪神・淡路大震災の時にそうだったように、「ボランティア元年」という言葉がマスコミをにぎわした。なかでも、300を越えるNGOの活動には注目が集まった。では、政府による国家管理型社会の中国で、非政府組織(NGO)はどのように救援・復興活動を展開したのだろうか。本研究は、DPCが武都仮設住宅コミュニティで展開した活動に、筆者も参加しながら、その活動を追尾したものである。<br> 政府主導の中国にあって、被災者は政府に依存し、受動的になりがちである。また、NGOと被災者の関係も「助けるのみのNGOと助けられるのみの被災者」という構図に陥りがちである。しかし、DPCは、一貫して、被災者の能動性・主体性を育むという姿勢を貫いた。言いかえれば、被災者が自らを助けることができるように被災者を援助する、という姿勢が貫かれた。この中国では珍しい活動モデルは漢旺モデルと称された。同モデルは、「①コミュニティに介入する→②コミュニティと共に生活する→③コミュニティに溶け込む→④コミュニティと共に働く/成長する→⑤コミュニティから撤退する」というステップを踏むべきとしている。ほとんどのNGOは、①だけにとどまり、被災者を一方的に助けるのみであるのに対して、②-④、とりわけ、被災者と共に働き成長していくことを目指している点が、同モデルの特徴である。<br> DPCは、3つの大規模プロジェクトを実施した。第1は、「心空間コミュニティ活動センター」の設置・運営という文化復興プロジェクトであった。活動センターは、無為に時間を過ごさざるをえない被災者が文化・娯楽活動を楽しめる場となった。第2は、クロスステッチ・プロジェクトという女性に収入を得る手段を身につけてもらおうとするプロジェクトであった。第3は、家畜飼育プロジェクトであり、無利子融資によって、被災者が豚や牛の飼育を再開できることが目指された。<br> 本稿の最後には、中国NGOが抱える諸問題を整理し、今後の課題を考察した。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680461488000
  • NII論文ID
    130004998422
  • DOI
    10.11245/jjgd.27.131
  • ISSN
    21854718
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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