ナノ銀・サブナノ銀の経鼻ハザード同定

DOI
  • 市橋 宏一
    大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト
  • 吉岡 靖雄
    大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター
  • 平井 敏郎
    大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト
  • 髙橋 秀樹
    大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト
  • 吉田 徳幸
    大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト
  • 角田 慎一
    医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター
  • 鍋師 裕美
    国立医薬品食品衛生研究所
  • 吉川 友章
    大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野
  • 堤 康央
    大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター

書誌事項

タイトル別名
  • Hazard identification of nano and sub-nano silver following nasal exposure

抄録

近年、粒子径が10~100 nmのナノマテリアル(NM)や10 nm以下のサブナノ素材(sNM)の開発が急速に進んでいる。これらの素材は電気的・機械的性質等に加え、融点などの物質固有の特性の点で、サブミクロンサイズの素材とは全く異なる性質を発揮する。そのため、NM・sNMは様々な産業に革命を起こす夢の新素材として期待されている。一方でNMやsNMの革新的な機能は、逆に、予測しにくい負の生体影響を誘発する可能性が懸念されている。これを受けて、世界各国でNMの安全性情報の収集が行われている。しかし、その安全性評価の現状は、NMを対象としたハザード同定が始まったにすぎず、安全性を議論するためのリスク解析に必須の曝露・動態の定量的評価とハザードの定量評価(閾値設定など)は殆ど進展していない。その上、sNMについては全くの手つかずである。以上の現状を鑑みて我々は、粒径20 nm未満のナノ銀(nAg)、1 nm未満のサブナノ銀(snAg)を用い、吸入曝露を想定し、経鼻曝露した際のハザード同定を試みた。nAg、snAg、硝酸銀水溶液を6.0 mg Ag/kgでマウスに7日間連続経鼻投与した時の一般毒性を評価した。その結果、snAg投与マウスは5日以内に全例死亡した。それに対して、nAgならびに硝酸銀水溶液投与マウスでは死亡例は認められなかった。続いて、各6.0 mg Ag/kgで単回経鼻投与した際の生体影響を評価したところ、nAg投与群では特に異常所見が認められなかった。その一方で、硝酸銀水溶液やsnAgを投与したマウスでは体重減少および体温低下が認められ、これらの効果は特にsnAg投与群において顕著であった。また、血球検査・血液生化学検査においてはいずれの群でも異常所見が認められなかった。以上、snAgがnAgとは異なる特徴的な生体影響を惹起することが示された。今後、snAgによる体重、体温の低下メカニズムを追究すると共に、snAgのADME情報を収集することで、snAgのハザードを定性・定量的に評価し、snAgの安全性情報を集積していく。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680523383424
  • NII論文ID
    130005008652
  • DOI
    10.14869/toxpt.39.1.0.o-26.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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