FOXA2およびHNF1α遺伝子導入によるヒトES/iPS細胞から薬剤代謝能を有した肝細胞への分化誘導

DOI
  • 高山 和雄
    大阪大学薬学研究科分子生物学分野 独立行政法人 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト
  • 稲村 充
    大阪大学薬学研究科分子生物学分野 独立行政法人 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト
  • 川端 健二
    独立行政法人 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト
  • 菅原 道子
    エーザイ株式会社
  • 菊池 きよ美
    エーザイ株式会社
  • 櫻井 文教
    大阪大学薬学研究科分子生物学分野
  • 古江(楠田) 美保
    独立行政法人 医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部 培養資源研究室 京都大学再生医科学研究所 幹細胞医学研究センター 細胞プロセシング研究領域
  • 水口 裕之
    大阪大学薬学研究科分子生物学分野 独立行政法人 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト 大阪大学大学院 MEIセンター

書誌事項

タイトル別名
  • Generation of metabolically functioning hepatocytes from human ES/iPS cells by FOXA2 and HNF1α transduction

抄録

【目的】肝臓は多くの薬物を代謝する臓器であり、創薬過程における候補薬物の肝毒性を正確に予測することが、安全な医薬品開発には重要である。無限増殖能と多分化能を有するヒト胚性幹細胞(ES細胞)およびヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)から分化誘導した肝細胞は、創薬過程における候補薬物の毒性評価などへの応用が期待されている。我々はこれまでに、SOX17、HEX、HNF4α遺伝子を分化過程の適切な時期に導入することにより、ヒトES/iPS細胞から成熟肝細胞を効率良く分化誘導できることを報告した(<i>Mol Ther</i>. 2012 Jan;20(1): 127-37)。ヒトES/iPS細胞由来の肝細胞を薬物の毒性評価へ応用するには、ヒト初代培養肝細胞と同程度の薬剤代謝能を有している必要がある。そこで本研究では、非常に高い遺伝子導入効率を示すアデノウイルスベクターを用いて肝関連転写因子を遺伝子導入し、さらに高い薬剤代謝能を有する肝細胞の作製を試みた。【方法】ヒトES/iPS細胞から肝細胞の分化過程において7種類の肝関連転写因子を導入し、最も効率良く肝分化を促進できる転写因子を探索した。分化誘導肝細胞の薬剤代謝能をヒト初代培養肝細胞と比較し、さらに肝臓で毒性を示すベンゾブロマロンなどの薬剤を分化誘導肝細胞に作用させた後の細胞毒性についても検討した。【結果・考察】検討した7種類の肝関連転写因子のうち、FOXA2およびHNF1α遺伝子を組み合わせて導入することにより、最も効率良く成熟肝細胞が分化誘導された。またシトクロムP450酵素などで代謝される9種類の薬物の代謝プロファイルを調べたところ、分化誘導肝細胞の薬物代謝能はヒト初代培養肝細胞より低いものの、いずれの薬物に対しても代謝能を有していることが確認された。さらに、分化誘導肝細胞は肝毒性を示す薬剤に対してヒト初代培養肝細胞と同様に細胞毒性を呈した。以上のことから、FOXA2およびHNF1α遺伝子を導入することにより、ヒトES/iPS細胞から薬物代謝能を有する肝細胞を効率良く分化誘導できるだけでなく、薬物の毒性スクリーニングに使用可能であることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680523343232
  • NII論文ID
    130005008694
  • DOI
    10.14869/toxpt.39.1.0.p-10.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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