離散wavelet変換を用いた表面筋電図解析パラメータの提案

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抄録

【はじめに】<BR>我々はこれまでにもwavelet変換(WT)を用いた表面筋電図解析について報告してきた。その中でWTを用いた解析は、時間と周波数に関する膨大な情報を集約する必要を認めた。今回、漸増負荷による等尺性収縮時の筋活動について離散wavelet変換(DWT)を使用して独自のパラメータを算出し、若干の知見を得たので報告する。<BR><BR>【方法】<BR>対象は健常女性20名(年齢23.4±1.5)で、被験筋は右上腕二頭筋とした。被験筋上の皮膚に、電極間距離2cmでディスポーザブル電極を貼付し、背臥位にて肘関節屈曲90度を保持させた。ワイヤーおよび滑車を介してポリタンクをつないだアームを前腕遠位部に肘関節伸展方向に負荷がかかるように設定した。それに水を注入し負荷を漸増させた。<BR> 測定は、まず最大筋力(100%MVC)を測定し、続いて負荷開始から肘関節を90度に保持できなくなるまでとし、その筋活動と負荷量を生体計測システム(NF回路ブロック製)を用いサンプリング周波数1kHzにてパーソナルコンピュータに取り込んだ。<BR> 採取したデータから、負荷量が5%MVC増加した時点毎に前後1秒間のデータを選択し、科学技術計算ソフト(MathWorks社製 MATLAB6.5およびWavelet Tool Box)にてDWTを行った。DWTは、信号波形を高周波部分(Detail)と低周波部分(Approximation)に分け、Approximationをさらに次のDetailとApproximationに分解する。この分解の深さがDWTの周波数表現となる。DWTにはDaubechies5、分解レベル5を用いた。<BR> その後、各レベルのwavelet係数の二乗和をDetailのパワー密度(PD)、すべてのwavelet係数の二乗和を総パワー密度(TPw)、TPwに対する各レベルのパワー密度比(RPD)、100%MVC時のTPwに対する漸増負荷時のTPwの比(RTPw)を求めた。<BR> 得られたデータは統計用ソフトウエア(SAS社製Stat View5.0)を用いて、二元配置分散分析にて交互作用を確認後、優位水準5%で多重比較を行った。<BR><BR>【結果と考察】<BR>本研究で用いたパラメータのうち、特に特徴的な所見が観察されたのはRPDであった。その中でも30%MVC以下の負荷時と70%MVC以上の負荷時において、レベル3では減少するのに対してレベル4においては逆に増加していた。<BR> 従来報告されている等尺性収縮時の局所性筋疲労の研究では、筋電図の低周波域がtype1線維の、高周波域がtype2線維の活動をそれぞれ反映しているとされている。またサイズの原理では、まずtype1線維から活動し、筋活動量が増加するに従いtype2線維が活動するとされているが、本研究では、それらの説とは異なる結果が得られた。これには、筋活動量の増加要因である時間的活動参加、空間的活動参加、各運動単位の活動のタイミングの一致(同期化)が関係しているものと思われる。今後、レベル3、4の違いを明らかにするために、さらなる研究が必要である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A0439-A0439, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540166912
  • NII論文ID
    130005012081
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a0439.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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