重度障害者の生活支援にスポーツが果たす機能について

DOI
  • 奥田 邦晴
    大阪府立看護大学総合リハビリテーション学部
  • 樋口 由美
    大阪府立看護大学総合リハビリテーション学部
  • 増田 基嘉
    大阪府立看護大学総合リハビリテーション学部
  • 林 義孝
    大阪府立看護大学総合リハビリテーション学部
  • 南野 博紀
    大阪府立身体障害者福祉センター機能訓練室
  • 山西 新
    大阪府立身体障害者福祉センター機能訓練室
  • 川邊 貴子
    大阪府立身体障害者福祉センター機能訓練室
  • 灰方 淑恵
    NTT西日本大阪病院リハビリテーション室
  • 喜多 あゆみ
    奈良県心身障害者リハビリテーションセンターリハビリテーション科
  • 田中 美紀
    武庫川女子大学健康・スポーツ科学科
  • 高橋 明
    大阪市障害者福祉・スポーツ協会スポーツ振興部
  • 小西 努
    大阪市障害者福祉・スポーツ協会スポーツ振興部

書誌事項

タイトル別名
  • ―理学療法学との接点を求めて―

抄録

【目的】<BR> 近年、競技やレクリエーションとして積極的にスポーツ活動に参加する重度の障害者が増加してきている。理学療法の目標の一つに障害者の生活支援がある。この生活支援に焦点を当て、重度の障害者の生活遂行過程においてスポーツが果たす機能ならびに理学療法学との接点を明らかにすべくインタビューによる調査を行った。<BR>【対象と方法】<BR> 本調査の主旨に同意を得ることができたスポーツを行っている重度障害者76名(A群)およびスポーツを行っていない重度障害者24名(B群)の計100名とした。スポーツ群の障害内訳はC5・6頸髄損傷39名、脳性麻痺(CP)30名、筋ジス他7名、スポーツ選手群はC5・6頸髄損傷11名、CP12名、他1名であった。上記対象者に面接による聞き取り調査を実施した。面接時間は平均約1時間、ボイスレコーダーでの録音および口述筆記を行った。<BR>【結果】<BR> 医療機関の受診状況はA群76%、B群95.8%であった。特にリハ科の受診率はA群の11.8%に比べB群では39.1%と高率であり、内容も理学療法目的がほとんどで日常的なリハ医療への依存性が高い傾向が見られた。スポーツを始めたきっかけは友人・知人の紹介が多く(43.4%)、医療従事者からの情報提供は極めて少なかった(3.9%)。リハセンター等のスポーツ施設を併設する医療機関に入院できるかどうか或いは障害者のスポーツに精通している指導者に出会えるかどうかが後のスポーツ活動に大きな影響を与えていた。スポーツを行う目的について71.1%が競技であり、レクリエーション、リハは各々11.8%であった。楽しみである、生き甲斐であると答えた者が約半数あった。スポーツ開始時期について、CP者では養護学校での体育の授業が45.2%、残りの41.9%の人は早い人で19歳、遅い人では54歳(平均29.8歳)であった。有職率はA群46.1%、B群16.7%であった。A群は給与、年金等すべての収入を合わせた年収について回答を得た70名は54.3%が200万円未満であったが、14.3%は年収400万円以上を得ていた。B群の20名は約8割が年収200万円に満たない状態であり、低所得層であることが伺えた。<BR>【考察】<BR> スポーツをするかしないかは本人の選択であるが、せめてスポーツに関する情報提供は早期から行われるべきであり、理学療法士は社会参加の一手段としてのスポーツの機能について認識を深めることが重要である。スポーツ場面において、選手同士は新たな自己を再発見・再認識することができるだけでなく、自己および他者の存在や役割を客観的に理解し合うことができ得る。また、スポーツはセルフヘルプグループに類似する機能、エンパワーメント機能等、重度障害者が充実した自立生活を送ることや自己実現を可能にする一手段として、また社会に踏み出す一歩としての重要な役割を有していることが明らかになった。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), E0786-E0786, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564606848
  • NII論文ID
    130005013082
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.e0786.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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