地域在住高齢者に対する転倒予防プログラムが転倒恐怖感に与える影響

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抄録

【目的】 転倒に対する過度の恐怖感(以下,転倒恐怖感)は多くの高齢者が抱えており,外出制限を引き起こし,QOL低下,廃用症候群へつながる危険性もあるため,介入プログラム提供の必要性が高まっている(Tinetti,1994,金,2001).地域在住高齢者を対象とした先行研究では,横断調査により転倒恐怖感に身体的・心理的変数が関連することが報告されている.転倒恐怖感の関連要因を縦断研究により検討した研究は少ないが,西田らは転倒恐怖感が高齢期に高頻度に発生することを報告している.そこで,本研究では地域在住高齢者を対象とした運動指導中心の転倒予防プログラムが転倒恐怖感に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.<BR>【対象】 介護予防事業に参加した地域在住高齢者24名(男性12名,女性12名).平均年齢76.8±5.4歳(65-86歳)を対象とした.なお,対象者はMental Status Questionnaireにて認知機能低下が認められず,歩行が自立または杖使用にて可能であり,研究内容に同意を得られた者である.<BR>【方法】 転倒予防プログラム前後において,アンケート調査を実施した.調査内容は,転倒恐怖感の指標としてModified Falls Efficacy Scale(以下,MFES)を用い,身体機能の指標として膝伸展筋力,開眼片脚立位時間,Functional Reach Test,Timed Up and Go test,5m最大歩行時間を代表値とした.日常生活活動(以下,ADL)の指標としてADL-20得点を用い,身体活動自己効力感の指標は虚弱高齢者の身体活動セルフ・エフィカシー(以下,身体活動SE)(稲葉,2006)を用いた.転倒経験の指標はベースライン調査時に過去1年間の,追跡調査時には過去3ヶ月間の転倒経験有無を各々聴取した.統計方法は,MFES得点変化量の関連因子の検討を行うため,従属変数をMFES得点の変化量とし,性・年齢を強制投入した上で,身体機能項目,ADL-20得点,身体活動SE得点,転倒経験の各々の変化量を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.統計解析はSPSS Ver15.0J for Windowsを用い,有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】 MFES得点(140点満点)は介入前128.8±21.2点,介入後129.3±20.6点であり,転倒恐怖感の軽減がみられた.また,性・年齢を調節後,MFES得点変化量に関連する因子としてADL-20得点変化量のみが抽出された(標準化偏回帰係数β = 0.664,P<0.01)(R2 = 0.471,P<0.01).<BR>【考察】 転倒に関する教育,運動・生活指導は転倒恐怖感軽減に有益な効果をもたらすとされている(Tennstedt,1998).本研究結果より,転倒恐怖感にはADL能力が影響していたことから,転倒恐怖感に焦点をあてた介入では,生活に密着したADL向上を目指す介入プログラムの提供が必要であることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), E0748-E0748, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543926400
  • NII論文ID
    130005016096
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.e0748.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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