運動イメージによる脳賦活の可能性

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著者

    • 鬼丸 武士
    • 国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部
    • 空閑 雄治
    • 国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部
    • 宮﨑 大地
    • 国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部
    • 大金 容子
    • 国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部
    • 後藤 純信
    • 国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部
    • 甲斐 悟
    • 国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部

抄録

【目的】<BR> 運動イメージとは,実際の運動を行わずに,その運動を想起することであり,リハビリテーション分野でも応用されている.その運動イメージは,障害によって実際に運動が行えない場合や治療時間外に自主的に行うことで,障害された一次運動野や運動関連領域の再構築にも役に立つと考えられる.そこで,本研究の目的は,実際に手指の巧緻動作や座位での投球動作と各々の運動イメージ中の脳活動の相違を光トポグラフィ装置(以下:NIRS)を用いて測定し,運動イメージ中の運動領域の脳活動を明らかにすることである.<BR>【方法】<BR> 対象者は,右利きの健常男性10名(平均年齢21.3歳).脳活動の測定にはNIRS ETG-4000(株式会社日立メディコ製)を使用し,酸化ヘモグロビン(以下:oxy-Hb)量を測定した.課題遂行の順序として,まず30秒間の安静,その後各課題を90秒間行い,最後に60秒間の安静とした過程を1セットとし,各課題2セット行った.運動課題は,a.座位での右手投球動作のイメージ(以下:投球イメージ) b.座位での自己ペース右手投球動作(以下:自己ペース投球動作) c.座位での外的刺激リズム右手投球動作(メトロノーム1Hz) d.座位での右手巧緻動作イメージ(以下:巧緻動作イメージ) e.座位での自己ペース右手巧緻動作(以下:自己ペース巧緻動作) f.座位での外的刺激リズム右手巧緻動作(メトロノーム1Hz)を行った.NIRSのプローブは,国際脳波検査10-20法によるCzを中心として,前頭葉,左運動野領域を覆うように装着し,30チャンネルで脳血流動態を計測した.脳血流量は安静時を基準とし,課題時の変化量を求めた.対象者ごとに,各チャンネルのoxy-Hb量の時間平均値と,活動平均値を算出した.それぞれの対象野に対応したチャンネルの平均値を活動値として算出した.<BR>【説明と同意】<BR> 対象者全員に対し,本研究の意義,目的,方法を口頭及び書面で説明し,書面にて同意を得た.また,ヘルシンキ宣言に遵守し,対象者は研究への参加の同意をいつでも撤回する権利を有し,それによる不利益を決して生じないことを説明した.<BR>【結果】<BR> すべての投球動作課題で左補足運動野(以下:LSMC),左一次感覚野(以下:LPSF),左一次運動野(以下:LPMC)の上肢該当領域,前頭前皮質領域(以下PFC)でoxy-Hb量が増加した.投球イメージで安静時から課題遂行時の活動量としてLSMC で0.08,LPSFで0.04,LPMCで0.08,PFCで0.04のoxy-Hb量の増加がみられた.自己ペース投球動作では,安静時から課題遂行時の活動量としてLSMCで0.50,LPSFで0.30,LPMCで0.55,PFCで0.20のoxy-Hb量の増加がみられた.外的刺激リズム投球動作では安静時から課題遂行時の活動量としてLSMCで0.25,LPSFで0.25,LPMCで0.35,PFCで0.15のoxy-Hb量の増加がみられた.また,巧緻動作課題でもLSMC,LPSF,LPMCの手指該当領域,PFCでのoxy-Hb量が増加した.巧緻動作イメージでは,安静時から課題遂行時での活動量としてLSMCで0.08,LPSFで0.04,LPMCで0.08,PFCで0.04のoxy-Hb量の増加がみられた.自己ペース巧緻動作では,安静時から課題遂行時の活動量としてLSMCで0.10,LPSFで0.08,LPMCで0.12,PFCで0.10のoxy-Hb量の増加がみられた.外的刺激リズム巧緻動作では安静時から課題遂行時の活動量としてLSMCで0.10,LPSFで0.08,LPMCで0.10,PFCで0.08のoxy-Hb量の増加がみられた.また,外的刺激リズム投球・巧緻動作ともに聴覚野でのoxy-Hb量の増加がみられた.<BR>【考察】<BR> 本研究では,実際の動作と,運動のイメージで同じ領野でのoxy-Hb量の増加がみられた.局所の脳活動が増加すると,酸素消費量よりも血流増加が大きくなりoxy-Hbが増加することが知られており,oxy-Hb量の変化は脳賦活の指標と考えることができる.運動イメージにより運動の実行機能としての役割があるとされる前頭前皮質に脳賦活がみられたことは,運動イメージトレーニングの有効性を示していると考えられる.また,運動イメージは脳卒中後の運動野の回復にも関与していることが報告されており,機能回復のためにも効果の検証を行う必要がある.これらのことから,運動イメージのリハビリテーションの導入は,有用であることが示された.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本研究において,イメージと運動課題で同じ部位での脳賦活が確認できた.これは,脳障害や長期安静を有する患者に対して簡便な方法で脳賦活を行うことができ,イメージトレーニングにより身体パフォーマンスの早期回復が期待できる方法の一つではないかと推察される.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010(0), AdPF2007-AdPF2007, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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