人工股関節全置換術後4日目の筋力から退院持の歩行能力を予測できるか  [in Japanese]

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【目的】近年、人工股関節全置換術(以下THA)後の在院日数は短縮傾向であり、当院クリニカルパスでも術後2~3週間での退院を目標としている。先行研究ではTHA後の歩行能力改善が在院日数短縮の一因となっているという報告がみられ、退院時の歩行能力を早期から予測する必要性が考えられる。これまで、術後歩行能力を予測する因子について、術前の股関節周囲筋力との関連が報告されているが、術直後の筋力が退院時の歩行能力に関連するかは明らかにされていない。術直後は手術による疼痛が強いことが考えられ、この時期の筋力測定に意義があるのかも不明である。そこで、今回の研究では、術後4日目に股関節及び膝関節周囲の筋力を測定し退院時の歩行能力との関連を調べることを目的とした。退院時の歩行能力については、先行研究において報告されている最大歩行速度1m/sec.以上を実用的な屋外歩行能力の目安とし、それが退院時に達成可能か否かを既定する因子について検討した。<BR>【方法】2007年10月~2010年9月までに当院整形外科で初回片側THAを施行し、術後指示がクリニカルパスであった188例中、術前日と術後4日目に筋力、術後2週目に歩行速度の測定が可能であった64例(女性57例、平均年齢64.9±8.1歳、平均BMI23.6±3.2)を対象とした。手術方法が前方アプローチと側方アプローチの症例を対象とした(前方24例、側方40例)。術後2週目の時点で歩行器や2本杖を使用していた症例は除外した。手術前日と術後4日目にHand-held Dynamometer(アニマ社)を用い、術側股関節外転・屈曲及び膝関節伸展筋力を測定した。股関節外転筋の測定肢位は背臥位にて股関節内外転中間位、股関節屈曲筋は端坐位にて股関節90°屈曲位、膝関節伸展筋は端坐位にて股関節、膝関節90°屈曲位とした。5秒間の等尺性収縮を2回ずつ測定し最大値を採用した。また、術後2週目に10m歩行テストを施行し最大歩行速度を測定した。分析方法は、術後2週目に1m/sec.以上の最大歩行速度を達成可能か否か(可=1)を従属変数とし、年齢、BMI、アプローチ、術前日と術後4日目のそれぞれの股関節外転筋力、股関節屈曲筋力、膝関節伸展筋力を独立変数として相関分析からSpearmanの順位相関係数を算出し、その後、変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を行いオッズ比(OR)並びにオッズ比の95%信頼区間(CI)を算出した。統計解析にはSPSS11.0Jを用い、いずれの検定も危険率5%未満を有意水準とした。<BR>【説明と同意】全ての対象者に対し、測定内容を説明し同意を得た。<BR>【結果】術後2週目に最大歩行速度が1m/sec.以上となった症例は29例、1m/sec.未満であった症例は35例であった。術後の最大歩行速度の影響因子として、術後4日目股関節外転筋力(r=0.439)、術後4日目股関節屈曲筋力(r=0.410)、術前日股関節外転筋力(r=0.331)、年齢(r=-0.326)、術後4日目膝関節伸展筋力(r=0.301)が有意な因子であった(P<0.05)。相関係数が0.3以上の変数を用いて、ロジスティック回帰分析を行ったところ、術後4日目股関節外転筋力(OR=1.379, CI:1.061-1.792, P=0.016)、術後4日目股関節屈曲筋力(OR=1.262, CI:1.007-1.580, P=0.043)、年齢(OR=0.897, CI:0.821-0.981, P=0.017)となった。本モデルによる歩行能力の適中率は79.7%であった。<BR>【考察】術後4日目の股関節外転筋力と股関節屈曲筋力が高く年齢が若い程、術後2週目に1m/sec.以上の歩行速度を獲得できる可能性が高いという結果となった。先行研究では、術前股関節外転筋力から術後の歩行能力を予測できるという報告がある。今回の研究では、術前日の股関節外転筋力より術後4日目の股関節外転筋力や股関節屈曲筋力の方が、相関は高い結果となった。これまで、術直後である術後4日目の筋力と退院時歩行能力との関係を調査した研究はほとんど見当たらないが、術後4日目の筋力は、手術による侵襲という影響を加味しており、術前筋力よりも退院時歩行能力をより正確に予測できる可能性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>歩行能力改善が遅延しそうな患者を術直後に予測し、パス逸脱の可能性のある患者を早期から把握することで、リハビリのプログラムの変更、転院の準備が早期に可能になると考えた。また、退院時の歩行能力と股関節周囲筋の関連を患者に提示することにより、リハビリへの意欲の向上につながると考えた。 <BR>

Journal

  • Congress of the Japanese Physical Therapy Association

    Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2010(0), CbPI1204-CbPI1204, 2011

    JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

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