家庭科で道徳的価値をはぐくむ視聴覚教材の開発

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書誌事項

タイトル別名
  • Development of Audiovisual Educational Materials to Cultivate the Ethical Values in Home Economics Education
  • Akkun Ookiku Naare
  • あっくん おおきくなぁれ

抄録

【目的】新学習指導要領では、道徳の授業だけでなく、各教科の中でも道徳的内容に取り組むことを要請している。道徳では規範を伝えるのではなく、様々な教材から多様な価値を見いだし、それぞれの多様な考えを交錯させて、個々がその価値を確認していく授業が求められている。家庭科は答えが一つでなく多様な価値を提示できる教科であり、そうした多様な価値を巡った議論を展開しやすい。また、家庭科では家庭生活、保育等、人とのかかわりに関する内容を学習するため、生命尊重や男女平等といった道徳的価値を取り上げやすい教科であることから、家庭科の教科特性を生かした、道徳的価値をはぐくむ新たな教材を開発することにした。その背景には、男性の育児参加等をテーマにした男女平等に関する教材は、10年以上前に制作されたものが多く現代社会に対応できる視聴覚教材は少ないということ、母子をゲストとして迎える授業が有効であることが実証されているが、毎回の授業に協力を得られるか難しいという現実がある。私たちは、小、中、高、特別支援の家庭科における家庭生活、保育の学習において児童・生徒が命の大切さやいとおしさ、男女平等といった道徳的価値を自ら学びとれる動画を作成し、実践を行ってきた。中学校の実践において、両親と子をゲストとして迎える授業と、両親と子のインタビュー動画を用いた授業による学びについて検討したところ、生徒は動画だけであっても、自分のこととしてとらえ、考えることができるという結果が明らかとなった。このような親子インタビュー動画の学習に効果があることは、大竹ら(2012)の研究によって述べられているため、これまでの親子インタビュー動画や、妊娠から出産までの胎児の映像及び家族の会話、乳幼児の成長を追跡した動画を整理し、新たな視聴覚教材を開発することで道徳的価値をはぐくむ授業実践を行うことを本研究の目的とした。 【方法】視聴覚教材は1本のDVDにまとめることにした。また、指導事例をCDにまとめることにした。視聴覚教材に関しては、ひとりの赤ちゃんの誕生前から3歳までの記録をホームビデオで撮りためた。その父母である30代の夫婦とその両親、祖母との関わりや会話を中心として、編集をした。編集にあたっては、生命尊重、男女平等といった道徳的価値を考慮した。指導事例に関しては、有効性の高いものである実践(第54、55回日本家庭科教育学会にて発表)について、指導案とワークシートをPDFデータ化した。【結果・考察】本教材は,1人の子どもの誕生から3歳までの記録を授業教材として使用しやすいよう,1編を10分程度に区切った視聴覚教材として開発した。その内容は次の通りである。1:DVD誕生前から3歳までの赤ちゃんとその家族の記録10編)2:CD(小・中・高・特別支援における指導案例、ワークシート例、掲示用資料)3:DVD解説書(DVD10編の解説)本教材の特徴は、授業のめあてに応じて、コンテンツを組み合わせて使用できることである。視聴覚教材の1編は10分程度であるが、その中は、20秒から5分程度のシーンに分かれており、そのシーンごとにチャプターを打ってあるため、区切って再生ができるようにした。各シーンには、生命尊重、家族愛、男女平等、助け合い、思いやり、自立、勤労等道徳的価値が含まれている。解説書には、各シーンにどの道徳的価値が含まれているか表記をした。よって、小学校から中学校、高等学校、特別支援学校の家庭科のみならず、道徳・特別活動・総合的な活動の時間など、さまざまな校種や教科等で活用できる汎用性の高い教材になった。また、それらを使用する指導事例やワークシート例、授業で使う掲示資料等がCDに含まれており、すぐ活用することができるので、有用性の高い教材であると言える。道徳的視点を持った新たな教材を開発したことには大きな意義があった。この教材を発信し、広く活用できるようにしていきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571532544
  • NII論文ID
    130005021628
  • DOI
    10.11549/jhee.56.0.71.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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