ナミビア北部地域におけるイネ・ヒエ混作栽培導入に向けた蒸発散特性の解析

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タイトル別名
  • Analysis of characteristics of evapotranspiration in northern Namibia for introducing the mixed cropping of rice and pearl millet

抄録

半乾燥地域であるナミビア北部地域において、従来作物生産に利用されることのなかった季節性湿地を有効活用する方法として、新規作物としてイネを導入し、ヒエと混作させる栽培技術が検討されている。乾燥に強く当地の主食であるトウジンビエと、洪水耐性が高く日本で最も研究が進められている作物のイネを同時に育てることにより、洪水と干ばつのどちらが発生した場合でも、安定した食糧供給を目指すための試みである。本研究では、ナミビア北部地域に出現する季節性湿地での混作栽培導入に向けて、特に蒸発散特性を明らかにすることを目的とした。 <br> 2012年9月、ナミビア北部地域に位置するナミビア大学オゴンゴキャンパス内(南緯17°40´、東経15°17´、標高1100m)に、季節性湿地を模した傾斜のついた試験圃場を設置した。2012年10月3日に、Lowerサイトから圃場の中央部にかけて、灌漑水が導入された。さらに、2012年11月5日から降水が開始した。2013年1月中旬より、Upperサイトにはトウジンビエ(Pennisetum glaucum)を中心とする植物、Lowerサイトにはイネ(Oryza satiya, NERICA)を中心とする植物が栽培された。各サイトで環境状態量を測定し、熱収支・ボーエン比法を用いて蒸発散量を算出して解析を行った。<br> TaVPDWsはUpperサイトとLowerサイトで大きな違いは見られなかった。TaVPDは11月上旬から12月下旬にかけて、降水の影響を受けて低い値をとったと考えられる。また、10月上旬以降、RnはLowerサイトの方がUpperサイトよりも大きくなり、αはUpperサイトの方がLowerサイトよりも大きくなった。これは、灌漑水導入に伴う水面形成の影響だと考えられる。さらなる原因解明のため、各サイトの土壌物理特性の違いや、放射収支における短波放射、長波放射のそれぞれの成分を分析する必要がある。<br> 一方、灌漑水導入以降、LowerサイトのETが著しく大きくなった。しかし、降水開始以降、LowerサイトのETは減少した。これは、降水に伴いTaVPDが減少した影響である可能性がある。さらに、作物栽培開始以降、LowerサイトのETは再び増加した。これは、イネの順調な生育に伴い、Lowerサイトで蒸発散量が増加した可能性が考えられる。また、UpperサイトのETは、Lowerサイトほど顕著でないものの、降水、栽培開始以降増加したようである。どちらのサイトにおいても、さらに他の因子の影響を検討していく必要がある。

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詳細情報

  • CRID
    1390001205712931456
  • NII論文ID
    130005050966
  • DOI
    10.11520/jshwr.26.0.270.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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