バングラデシュ・ダッカにおける浸水との接触機会が下痢症罹患リスクに寄与する度合いの季節変化に関する研究

DOI
  • 橋本 雅和
    山梨大学大学院医学工学総合教育部環境社会創生工学専攻
  • 末次 忠司
    山梨大学大学院医学工学総合研究部国際流域環境研究センター
  • 市川 温
    山梨大学大学院医学工学総合研究部国際流域環境研究センター
  • 砂田 憲吾
    山梨大学大学院医学工学総合研究部国際流域環境研究センター
  • 近藤 尚己
    東京大学 医学系研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Study on the seasonal change of an attribution of flooding condition to the diarrhoea incidence in Dhaka City, Bangladesh

抄録

下痢症は肺炎に継ぐ5歳未満児の主要な死亡原因の1つであり,洪水氾濫などの外的な要因によってその被害が大きくなる.そこで,洪水氾濫モデルを用いた定量的な健康リスク評価手法に関する研究が進められているが,関係が複雑であり感染ルートの仮定が難しいという問題がある.感染の原因は浸水との接触機会に加え,浸水の汚染度,生活習慣などの社会的な要因が関係する.  これに対して筆者らはバングラデシュの首都ダッカを対象地域とし,衛生環境が比較的不良であるスラムにおいて,浸水に対して危険意識の低い5歳未満児を対象にし,浸水の物理的接触機会のみを指標に用いた健康リスク評価手法に主眼を置いて研究を行ってきた.  これまでの研究により,雨季の最中での影響度については明らかになっていたが,その影響度が雨季を通して全体で保たれるかどうかは明らかにされていなかった.よって,本研究では浸水との物理的接触機会が下痢罹患リスクに寄与する度合の季節変化を明らかにすることを目的として,ダッカにおいて氾濫解析を行い,2007年の雨季にMollahら(2009)によって雨季始,雨季中,雨季終の三度に渡って調査された健康調査結果との比較を行った.  結果より,雨季で罹患リスクが増える傾向が見られたが,致死リスクにも季節変動があるものの傾向は見られなかった.また,浸水の影響度については,罹患リスクで季節変動は小さかったが,致死リスクで大きく,雨季終の影響度は雨季始の2分の1以下になっていることがわかった.全体での罹患率,致死率が大きくなる季節で浸水の影響度が小さくなっていることから,健康被害が大きくなるに連れて,浸水以外の原因で被害を受ける人が多くなり,浸水の影響度が低くなる可能性が示された.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205712860160
  • NII論文ID
    130005050997
  • DOI
    10.11520/jshwr.26.0.68.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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