マウス卵子形成過程における5ヒドロキシメチル化シトシンのダイナミクス

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抄録

【目的】哺乳動物の受精卵では,全能性再獲得における初期化プロセスの一環として,ゲノム広範囲な脱メチル化が生じる。精子由来ゲノムの5メチル化シトシン(5mC)は受精直後急激に減少するが,これは5mC酸化活性を持つTET3により5mCが5ヒドロキシメチル化シトシン(5hmC)に変換される現象であることが証明された。本研究では,卵子における5hmCの存在の有無および局在について検証した。【方法】新生仔,成長期,性成熟雌マウスから非成長期卵,成長期卵および成長完了卵を採取して供試した。また,DNAメチル基転移酵素補因子(Dnmt3L)ヘテロあるいはホモ欠損雌マウスの成長完了卵,および野生型精子とのIVFにより得られた前核期受精卵を用いた。固定処理後,5mCおよび5hmC抗体処理・核染色し,共焦点レーザー顕微鏡により蛍光を観察した。また,卵子の5hmC修飾因子と予測されるTet3の発現を定量的RT-PCRにより解析した。【結果】免疫染色の結果,5mCシグナルは15日齢の成長期卵より検出された。一方,5hmCシグナルは非成長期および成長期卵においては検出されなかったが,成長完了以降ではほぼ全ての卵子で検出された(89/91)。この5hmCシグナルはPropidium iodideによる核染色領域と一致していた。定量的RT-PCRの結果,Tet3の発現は10日齢の成長期卵から上昇し始め,成長完了卵では3倍の発現を示した。5hmC修飾がDnmt3L依存的に生成されるかを検証するため,Dnmt3L欠損成長完了卵および受精卵を用いた免疫染色を行った。その結果,Dnmt3L欠損において卵子核および雌性前核の5mCシグナル強度は野生型と比較して70%低下したのに対し,5hmCシグナルに明確な差はなかった。これらの結果から,卵子形成過程における5hmCは5mCとは異なり,成長完了卵で修飾されることが明らかになった。卵子での5hmC獲得は受精後の初期発生過程における転写活性及びエピゲノム変化に関与することが予想される。

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