沖縄トラフ熱水におけるメタンの起源

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沖縄トラフに存在する高温熱水サイトでは、総じて1mmol/kg以上の高濃度メタンが観測される。沖縄トラフで最初の熱水(JADEサイト)が観測された当初は、沖縄トラフの豊富に堆積物が存在する地質背景を踏まえ、堆積物(有機物)の熱分解反応によってメタンが付加されることが、高いメタン濃度の原因であると考えられた(Ishibashi et al., 1995, Chem. Geol.)。しかしその後、沖縄トラフ内の各サイトにおいて観測が実施され、たとえばメタンの13C値(-55‰~-25‰)やH2/CH4比(下右図: Kawagucci et al. submittedを改変)に大きなバリエーションが観測された。この事実は、沖縄トラフ熱水で観測される高濃度メタンが、すべて同様に堆積物の熱分解のみに由来しているわけではないということを示している。たとえば、熱水循環の涵養域および噴出口直下に存在する堆積層内での微生物メタン生成代謝も、メタンの起源として想定しなければならないだろう。本講演では、海底下で考えられるメタンの起源(反応・場)について、メタンの起源推定に用いられる指標に影響を与えるファクターを勘案した上で、各指標がどのような値を取り得るかを考察し、沖縄トラフを流れる「メタンの大河」の起源について包括的な議論を行いたい。沖縄トラフ熱水のメタンの大河についての議論を通じて、地殻内環境におけるメタンの挙動指標の再構築が行われることは、熱水活動以外の地殻内現象、たとえば冷湧水やメタンハイドレートなどの研究に対しても有効な知見を与えるだろう。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205732379648
  • NII Article ID
    130005054063
  • DOI
    10.14862/geochemproc.56.0.6.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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