マイクロCTによる上顎側切歯根尖孔, 根尖形態の分析

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  • Analysis of Apical Foramen and Root Canal Morphology in Maxillary Lateral Incisor Using Micro-CT

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抄録

 目的 : 上顎側切歯は, 根尖近くで遠心や舌側に湾曲しているため, 前歯の単根管歯であるにもかかわらず, 根管充塡後の予後が劣り治療の難しい歯種とされている. 近年, 試料を破壊することなく三次元的な観察が可能なマイクロCTが, 内部構造の観察に多用されている. 本研究ではマイクロCTを用いて, 上顎側切歯の観察と分析を行った. <br> 材料と方法 : 齲蝕のないヒト上顎側切歯抜去歯50本に対し, マイクロCTで連続的に断層撮影を行い, 三次元構築した画像から, 根尖孔と根尖狭窄部の形態, 根尖と歯髄腔の位置関係について観察を行った. <br> 結果 : 根尖から生理学的根尖孔までの距離は最大で1.9mm, 最小で0.2mm, 平均で0.7mmであった. 根尖と解剖学的根尖孔中央の距離の差は, 近遠心方向からの観察では0.55mm, 唇舌方向からの観察では0.37mmとなった. 根尖狭窄部の観察では, 明瞭な狭窄を示したものは, 近遠心方向からの観察では22歯, 唇舌方向からの観察では17歯となった. また, 根尖と歯髄腔上端, 歯冠切縁の位置関係は変異が大きかった. ファイルの挿入を容易にするようなアクセスラインは唇側で交差するものが43歯, 切縁が7歯であった. <br> 結論 : 今回の実験により, 上顎側切歯の根管拡大の際, ファイルの挿入が容易になるようなアクセスラインを確保する必要性が示された. また, 根尖部の形態の複雑さ, 根尖側におけるファイル操作の難しさが明らかになった. 上顎側切歯の根管は変異に富むため, 治療時には十分な解剖学的知識と慎重な器具操作が必要である.

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