心房細動発症における炎症の機序と役割

  • 赤澤 宏
    大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学〔現 東京大学大学院医学系研究科先端臨床医学開発講座〕 東京大学大学院医学系研究科循環器内科
  • 小室 一成
    東京大学大学院医学系研究科循環器内科

書誌事項

タイトル別名
  • The Mechanism and Role of Inflammation in the Pathogenesis of Atrial Fibrillation

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抄録

これまでの不整脈の研究は,電気生理学的なアプローチが主流であった.しかし近年,心房細動(AF)の病態に炎症のプロセスが深く関与している可能性が示唆されている.それは,AF患者で見られる炎症マーカーの上昇や心房組織への炎症細胞浸潤といった観察研究だけでなく,動物モデルを用いた実証研究によっても支持されつつある.例えば,アレルギー反応や免疫応答にかかわる肥満細胞が心房線維化やAFの発症に重要な役割を果たしていることが,マウスのAF誘発モデルを用いることにより明らかとなった.肥満細胞は血行力学的負荷によって心房組織に浸潤し,線維形成性サイトカインである血小板由来成長因子(PDGF-A)の産生を増加させ,心房リモデリングやAFの発症を促進していた.今後,肥満細胞を起点とする炎症ネットワークを切り口とした,AFの病態解明とアップストリーム治療の開発へ向けた研究により,新たな展開が期待されている.

収録刊行物

  • 心電図

    心電図 33 (2), 163-169, 2013

    一般社団法人 日本不整脈心電学会

参考文献 (30)*注記

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