Mg<SUP>2+</SUP>の電気生理学

  • 柳(石原) 圭子
    佐賀大学医学部生体構造機能学講座器官・細胞生理分野学〔現 久留米大学医学部医学科生理学講座統合自律機能部門〕

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タイトル別名
  • Magnesium and Cardiac Electrophysiology

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抄録

マグネシウムイオン(Mg2+)は体内ではナトリウムイオン(Na+),細胞内ではカリウムイオン(K+)に次いで二番目に多い陽イオンであり,体内のMg2+不足は不整脈,虚血性心臓病,心不全などの心血管疾患の病態にかかわる可能性が古くから指摘されてきた.不整脈との関連では,硫酸マグネシウムの静脈内投与がQT延長に伴うトルサード型心室頻拍を抑制することが知られており,一方で高Mg2+血症は房室ブロックや心停止を引き起こす危険性がある.そのメカニズムには細胞外から心筋の膜電位やイオンチャネルへの作用以外に,何らかの経路でMg2+が細胞内に流入してイオンチャネル機能を修飾する可能性が考えられる.生理的濃度の細胞内Mg2+(Mg2+i)にはL型Ca2+チャネルを抑制し,緩徐活性型遅延整流性K+電流(IKs)や内向き整流K+電流(IK1)を増加させる作用がある.したがって,Mg2+流入が心室筋活動電位の持続時間を短縮して活動電位延長に伴う早期後脱分極,さらにはトルサード型心室頻拍を抑制する可能性がある.またMg2+iが誘発するIK1トランジェントは,急速活性型遅延整流性K+電流(IKr)が減少する際に,再分極予備能として早期後脱分極発生を抑制することがシミュレーションによって示されている.

収録刊行物

  • 心電図

    心電図 33 (2), 179-185, 2013

    一般社団法人 日本不整脈心電学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (17)*注記

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