「特集2.内分泌疾患におけるPET」によせて

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抄録

FDG-PETは種々の内分泌腫瘍性疾患に用いられており,乳癌,甲状腺癌ではルーチン検査となっていることと推察する。原理は,悪性腫瘍のグルコース利用亢進をターゲットとしたものであり,一般に集積の強いものほどaggressiveである。そのため,半定量評価指標であるSUV(standardized uptake value)が一人歩きしてしまい,臨床医がこの値に振り回されている現場を時に経験する。また,あらゆる検査と同様に,有用性と限界点を持っている。乳腺,甲状腺の項目を書いていただいた立石宇貴秀先生,中駄邦博先生は,それぞれ深い造詣をお持ちであり,これらの臓器におけるFDG-PETの使い方をわかりやすく解説していただけたと思う。副甲状腺はPET検査ではないが99mTc-MIBIシンチグラフィや201Tl/99mTcシンチグラフィサブトラクション法が用いられており,USで検出できない異所性副甲状腺腫大の検出などに有用性が高いことは周知であろう。しかし,通常のシンチグラフィは分解能などの問題で検出能に限界があるため,種々のPETトレーサが検討されている。むろん,この目的に対するPET検査は研究レベルのものであるので,通常の医療現場で用いることはできないものの,困難な症例に遭遇した場合に打開策となりえると考え,知識をインプットしておくことは無駄ではないと考える。この項目はメチオニンPETの経験をお持ちの中本裕士先生にお願いした。我が国における神経内分泌腫瘍の画像診断は,形態診断であるUS,CT,MRIで行われるが,欧米ではソマトスタチン誘導体トレーサが効果的に用いられている。存在・部位診断のみならず,潜在的に悪性である可能性のあるこの疾患の全身検索にも応用されている。古くは111In-オクトレオシンチが,最近はPETトレーサである68Ga-ソマトスタチン誘導体が応用されている。特に後者の本疾患における有用性は非常に高いものである。また,悪性神経内分泌腫瘍で手術不可能な症例に対する90Y/177Lu-ソマトスタチン誘導体内照射療法の適応・効果判定に意義が高い。この治療は現状では国内では実施されていないが,現在国内への導入が検討されている段階である。窪田和雄先生は,このような流れの中で,積極的に取り組んでおられる。褐色細胞腫における123I/131I-MIBGシンチグラフィ,131I-MIBG内照射療法は本誌をお読みの先生方はご存じであると思う。一方で,FDG-PETの意義はあまり知られていないかもしれない。確定診断を進める過程ではFDG-PETを行う必要性は乏しいが,再発例や転移例などの悪性褐色細胞腫と判断された段階で意義を有する。すなわち,MIBG集積とFDG集積は相補的関係を有するようであり,一方のみが集積することがよく経験される。これは,各病巣の生物学的性格の相違に基づくものと考えられる。131I-MIBG内照射療法を含め,これらの経験が豊富な吉永恵一郎先生に解説をお願いした。本特集が,今後の診療の参考となることを祈念する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680402726528
  • NII論文ID
    130005097638
  • DOI
    10.11226/jaesjsts.32.2_91
  • ISSN
    21869545
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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