分子標的薬の治療標的と作用メカニズム

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タイトル別名
  • Molecular targeted therapy in breast cancer ―Mechanism of action―
  • ブンシ ヒョウテキヤク ノ チリョウ ヒョウテキ ト サヨウ メカニズム

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抄録

乳癌の分子標的薬は,PI3K/AKT/mTOR経路,HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型),血管新生因子などを標的に開発されている。ER(エストロゲン受容体)陽性乳癌の内分泌療法耐性機序にmTORの活性化が関与しており,すでにmTOR阻害薬のeverolimusは臨床の場で用いられている。また,PIK3CAには高頻度で遺伝子変異が生じており,PI3K阻害薬も開発段階にある。mTORとPI3Kでは阻害効果に差が認められることから,どの分子が治療標的か,バイオマーカーの同定は重要である。抗HER2抗体医薬のtrastuzumabに対する耐性機序にはリガンド依存的なHER2-HER3シグナルの活性化が関与しており,HER3との結合部位を認識する抗体医薬のpertuzumabはこのシグナルを阻害する。また,trastuzumabに抗癌剤を結合したtrastuzumab emtansine(T-DM1)は,細胞膜のHER2と伴にインターナリゼーションによって取り込まれ,リソソームで分解されることで遊離したemtansineが抗腫瘍効果を発揮する。このようにeverolimusやpertuzumabは活性化シグナルの阻害で治療効果を得るのに対し,T-DM1は細胞内への取り込みと分解効率が効果に影響すると推測される。

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