電子スピン共鳴からみた高血圧ならびにメタボリックシンドロームの細胞膜機能異常と微小循環障害─内皮機能,肥満関連血管作動物質の関与を中心とした検討─

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タイトル別名
  • Electron Spin Resonance Study of Membrane Abnormality and Microcirculatory Dysfunction in Subjects with Hypertension and the Metabolic Syndrome: In Relation to Endothelial Function and Obesity-associated Vasoactive Substances

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抄録

要旨:本研究では細胞膜機能と循環不全との関連をみるため,高血圧やメタボリックシンドローム患者の細胞膜流動性(fluidity)を電子スピン共鳴法にて測定し,血管障害との関連やその調節機構を検討した。高血圧患者の赤血球膜fluidity は正常血圧群に比し有意に低下(microviscosity が悪化)していた。さらに赤血球膜fluidity の低下は動脈硬化の指標であるbrachial-ankle pulse wave velocity(baPWV)の増加と有意に相関し,膜のrheologic behavior や微小循環の異常が血管障害と深い関連を持つ可能性が示唆された。そして血漿nitric oxide(NO)代謝産物濃度が低値であるほど,また血漿内因性NO 合成酵素阻害物質(asymmetric dimethylarginine)濃度が高値であるほど赤血球膜fluidity は減少し,血管内皮障害によるNO 作用不全が膜機能異常の成因に一部関与すると考えられた。さらに脂肪細胞由来のadipokine であるアディポネクチンの増加は血漿NO 代謝産物レベルと有意な相関を示し,赤血球膜fluidity の上昇を伴っていた。逆に血漿ホモシステイン濃度や血中酸化ストレスレベル,炎症反応が増大するほど赤血球膜fluidity と血漿NO 代謝産物レベルは低下していた。一方,減塩食や有酸素運動療法,一部の薬物療法は高血圧患者の赤血球膜fluidity を有意に改善した。以上より,電子スピン共鳴からみた細胞膜機能異常は高血圧やメタボリックシンドローム患者の血管障害や内皮機能不全を反映し,肥満関連血管作動物質の影響を強く受けることから,これら疾患の治療効果の判定や臓器障害の予測因子として有用であると考えられる。

収録刊行物

  • 脈管学

    脈管学 55 (8), 111-116, 2015

    日本脈管学会

参考文献 (42)*注記

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