小児心不全に対する心臓内幹細胞自家移植療法

DOI
  • 後藤 拓弥
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科
  • 石神 修大
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科
  • 逢坂 大樹
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科
  • 佐野 俊二
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科
  • 王 英正
    岡山大学病院新医療研究開発センター再生医療部

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抄録

近年,再生医療の研究はますます盛んになり,心不全に対する心筋再生医療の臨床治験が徐々に報告されるようになった.初期技術として,骨髄幹細胞や間葉系幹細胞,臍帯血幹細胞などを用いた研究ではその有用性を示す報告が相次いでいる.とりわけ2002年の心筋幹細胞の発見は,心筋再生医療に大きな希望をもたらした.心筋幹細胞は他の幹細胞に比べ,より高い治療効果が期待されており,成人虚血性心疾患に対する心筋幹細胞移植は,海外での臨床治験が報告されており,治療効果が示されている.一方,先天性心疾患の一部の重症疾患群では,救命不能な症例がいまだ存在する.今回我々は,世界初の小児心疾患に対する心筋幹細胞移植療法の第1相臨床研究(TICAP試験)を行い,心臓内幹細胞移植療法の安全性と治療効果を確認した.続いて,第2相臨床研究(PERSEUS試験)を現在施行中であり,心筋幹細胞治療の標準医療化を目指している.一方,これまでの多くの臨床試験の初期成績により,心臓幹細胞移植療法の治療効果は確認されつつあるが,その作用機序は,幹細胞の心筋細胞への分化に加え,幹細胞の分泌するある種のサイトカインの関与などが考えられている.また,心臓への幹細胞の生着性を上げることでより高い治療効果を得られる可能性があり,心臓への移植細胞の誘導や足場となる生体材料の併用など様々な試みがなされている.近いうちに,心臓再生医療が心疾患の新しい治療手段となる時代が到来するであろう.

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