術前に消化管出血を合併しハイド症候群を疑った重症大動脈弁狭窄症の1例

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タイトル別名
  • A Suspected Case of Heyde Syndrome with Bleeding of the Small Intestine before Aortic Valve Replacement for Severe Aortic Valve Stenosis

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抄録

ハイド症候群と思われる症例に対して大動脈弁置換術を施行し,良好な結果を得たので報告する.症例は74歳女性.60歳時にリウマチ性僧帽弁狭窄症に対して機械弁による僧帽弁置換術を施行し経過観察されていた.今回重症大動脈狭窄症に対して弁置換術を予定していたが,手術待機中に貧血の著明な進行(Hb : 9.3 g/dl→4.0 g/dl)を認めた.上部下部消化管内視鏡にて出血性病変がなかったため,カプセル内視鏡を施行したところ小腸に出血性のangiodysplasiaを認め,貧血の原因と考えられた.さらに貧血が進行するために計26単位の濃厚赤血球の輸血を行い,原因血管検索および止血目的に血管造影検査を施行したが,造影剤の漏出なく出血源を特定することができなかった.しかしながら,その直後下血は消失し,貧血の進行がなくなったため,大動脈弁置換術を施行した.術後,消化管出血の再燃はなく術後22日目に退院となった.ハイド症候群は大動脈弁狭窄症が引き起こす後天性フォンウィルブランド病に消化管angiodysplasiaによる出血を合併する病態とされる.診断には消化管出血の確認とフォンウィルブランド因子の高分子マルチマー解析とされるが,普及度から考慮すると小腸カプセル内視鏡が診断に有用である.根本的治療は大動脈弁置換術であるので,消化管出血を合併した状態での人工心肺の使用は出血のリスクがあるが,ハイド症候群を疑った症例では適切な手術時期を検討していくべきである.

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