ミラー粒子境界表現を用いたMPS法による流体シミュレーション

DOI
  • 松永 拓也
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
  • 柴田 和也
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
  • 室谷 浩平
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
  • 越塚 誠一
    東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Fluid flow simulation using MPS method with mirror particle boundary representation

抄録

本研究では, MPS法による2次元流体シミュレーションのためのミラー粒子境界表現の開発および検証を行った. 本提案手法は, 固体壁境界を取り扱うための手法である. 境界形状は線分の集合として表される. 従って, ポリゴンモデルを用いる固体壁境界表現同様に境界要素自身は厚みをもたない. 従来のミラー粒子境界表現と比較して, ミラー粒子のミラー粒子を考慮すること, 視線判定を導入することが主な特徴として挙げられる. <br>本手法におけるミラー粒子は, 従来手法同様に, 境界を軸とした流体粒子の鏡映を作成するという考え方に基づいている. 複数の接続された線分で表される境界形状を線要素と点要素に分割し, 点要素に関しては凹形状と凸形状を区別する. また, 視線の概念を導入し, 境界要素, 流体粒子, ミラー粒子の間の視線が通る条件を定義した. 境界要素から流体粒子への視線が通るとき, ミラー粒子を生成する. 更に, 生成したミラー粒子への視線が通る線要素がある場合, そのミラー粒子に対する新たなミラー粒子を生成する. <br>以上のミラー粒子生成アルゴリズムを適用することで, 境界近傍の外部領域に抜け目なくミラー粒子を配置することができるが, ミラー粒子が過剰に存在する領域が発生してしまう. そこで, 近傍粒子計算に視線判定を導入する. 具体的には, 影響半径未満の距離に存在し, かつ, 着目流体粒子からの視線が通る流体粒子およびミラー粒子のみを近傍粒子として採用する. 視線判定は近傍流体粒子を吟味するためにも利用されており, 境界を跨ぐ流体粒子間の接続を切断できるため, 影響半径未満の厚みをもつ固体相を含む問題の計算が可能となる. <br>基礎検証として3つの問題の計算を行った. 単純形状における静水圧問題を本ミラー粒子境界表現を用いたMPS法によって計算し, 壁粒子を用いた固体壁境界表現に用いた場合と比較を行った. 定常状態における圧力分布を比較したところ, およそ定量的な一致が見られ, 単純形状における固体壁境界条件が妥当に評価されていることを確認した. 続いて, 凹形状を有する固体壁面に対する水柱衝突の計算を実施した. 粒子の境界貫通が起こりやすい問題であったが, そのような現象は確認されず安定に計算が実行できた. 定常状態における静水圧分布を計算したところ, 鋭角な凹面内部には少数の流体粒子しか存在しないにもかかわらず, 圧力分布を妥当に評価することができたことから, ミラー粒子のミラー粒子を使用することの有効性が示された. 更に, バッフル付き円筒回転体内の流れの計算を行った. 円筒形状は離散的な線分によって表現を行ったが,線分の接続部の影響による目立った不自然な数値挙動は見られず, 安定に計算を実施することができた. このことから, 本研究にて採用している視野の定義および視線判定に基づく近傍粒子選択が妥当であることが確認できた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204473311872
  • NII論文ID
    130005122066
  • DOI
    10.11421/jsces.2016.20160002
  • ISSN
    13478826
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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