当院における少年野球に対するメディカルチェック

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  • 初年度の取り組み

抄録

<p>【目的】</p><p>近年、少年野球のメディカルチェック(以下MC)を実施する際に、肘関節の超音波検査が導入されている。早期に上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)が発見され、障害予防へと繋がる有効性も報告されている。他県において、超音波による肘検診が積極的に実施されている中、沖縄県においては報告がされていない。そんな中、当院ではH27年度よりMCを実施している。今回の目的は、当院においてMCを実施した少年野球選手の野球肘の現状を知ることである。</p><p>【方法】</p><p>対象は平成27年5月にMCを受けた少年野球選手17名(平均年齢10.6±0.8歳)である。MCは整形外科医師1名、理学療法士2名、助手3名で行った。MC項目は肘関節検診(超音波検診)、肩関節可動域(2nd内旋、2nd外旋)、下肢柔軟性〔股関節内旋、下肢伸展挙上テスト(以下SLR)、踵臀間距離(以下HBD)、指床間距離(以下FFD)〕、野球肩理学所見11項目テスト(以下原テスト)を行った。今回は、原テストのSSDを除く10項目を実施。超音波検査にて、肘に不整がある選手(以下問題あり群)、肘に不整のない選手(以下問題なし群)に分け、各項目を比較検定した。統計学的検定はSASシステムのWilcoxonを用い、有意水準を5%とした。</p><p>【結果】</p><p>超音波検査の問題あり群は10名(59%)、問題なし群は7名(41%)であった。問題あり群では、内側上顆形態異常が7名(41%)、OCDが3名(18%)に認められた。肩関節可動域の2ndIR平均値が44.5±8.2°問題あり群が46.9±8.6°問題なし群が41.1±6.2°、2ndER平均値が121.5±10.0°問題あり群が115.8±7.2°問題なし群が129.7±7.4°であった。下肢柔軟性では、股関節内旋平均値は55.9±11.8、問題あり群が52.5±12.1、問題なし群が60.7±9.4、SLR平均値は77.4±11.4°であり、問題あり群が73.5±12.9°問題なし群が82.9±12.9°であった。HBD平均値は2.4±2.3問題あり群が3.3±2.5、問題なし群が1.1±1.0、FFD平均値は3.2±7.0、問題あり群が1.5±6.1、問題なし群が5.7±7.5であった。原テスト平均値は6.7点であり、問題あり群が6点、問題なし群が7.7点であった。2ndER、原テストの両群で有意差が認められたものの、その他の項目では有意差は認められなかった。</p><p>【考察】</p><p>肘関節の問題あり群において、2ndER、原テストの点数共に問題なし群より低値を示した。吉田らは肩のMCで原テストの得点が低い者に肘の障害を示す例が高率に見られたと報告しており、今回も同様の結果となった。野球肘の発症率は、内側上顆下端障害が約20?40%、OCDが約1?4%と言われている。しかし、今回の結果では内側上顆の形態異常が41%、OCDが17%といずれも高値を示していた。岩瀬らは、上腕骨内側上顆下端障害が投球による動的ストレスが主体であるのに対し、OCDは投球による動的ストレスと内因との両方が関与すると述べている。筋力が未発達であり、発達段階の小学生において、コンディショニング不良が不良投球フォームへ繋がることも、高値を示した原因の一つと考える。少年野球において、イニング制限は設けているものの明確なオフシーズン、球数制限は定められていない。今回のチームでも、週5日(練習時間2?3時間)、球数制限なしという環境であった。年間を通し野球のできる沖縄において、このような環境因子が加わったことも今回の結果に繋がったのではないかと考える。</p><p>【まとめ】</p><p>少年野球選手にMCを実施した結果、野球肘の発症率が高い傾向にあった。MCにおいて超音波検査の有用性を示し、身体所見と照らし合わせることによって野球肘の障害予防につながると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>研究実施に際し対象者に研究について十分な説明を行い同意を得た。 </p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680603021440
  • NII論文ID
    130005175402
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_271
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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