発達障害児における自画像描写と運動発達の関係性

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抄録

【目的】発達障害とは「学習障害(LD)」,「注意欠陥多動性障害(ADHD)」,「広汎性発達障害(PDD)」「軽度の知的障害」,「発達性協調運動障害」を称したものである。近年,発達障害はまれな障害ではなく,我々理学療法分野においても発達性協調運動障害に対する介入が求められている。そこで今回は,発達障害児の描写する自画像と運動発達の関係性を検討したので報告する。【方法】対象は当院小児外来リハビリテーションに通院している発達障害児11名(平均月齢66±17.5ヶ月)である。対象児にはA4用紙に鉛筆を用い,自己の全身像を描写するよう教示した。描写された自画像はグットイナフ描写テスト(以下DAM)を用いて採点し,精神年齢を算出した。また,児の運動機能評価には乳幼児発達スケールを使用し運動領域における発達年齢を算出した。統計学的解析には児の生活年齢,DAMから算出される精神年齢,乳幼児発達スケールから算出される運動発達年齢を対応のある一元配置分散分析にて分析した。また,児の生活年齢および精神年齢,運動発達年齢の関係性を検討するためPearsonの相関係数にて分析した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に準拠し,対象児の保護者には口頭および紙面にて同意を得た上で実施した。【結果】描写された自画像の一例として頭部は描写されているが頸部や体幹が描写されず,頭部から直接四肢が描写されているものや,頭部・頸部・体幹は描写されているが四肢の描写が曖昧なものなど,生活年齢に対して描写内容が不十分なものが多かった。統計学的分析結果としては対象児の生活年齢に対して精神年齢および運動発達年齢に有意な低下が認められた(p<0.05)が,精神年齢と運動発達年齢との間に有意差は認められなかった。また,生活年齢と精神年齢の間(p<0.01 r=0.73),精神年齢と運動発達年齢の間(p<0.01 r=0.89)には有意な相関関係が認められた。【考察】今回,発達障害を有する児は自己身体に対する認識の低下が自画像に現れており,生活年齢に対し精神年齢および運動発達年齢の低下が認められた。行為および運動を学習する上で自己身体の認識は大切であり,発達障害児において自画像を描写する事は自己身体をどの程度認識できているのか評価するのに有用であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究は発達障害児に対する理学療法が運動機能面の評価と運動課題の提示だけではなく,児が自己身体を認知できているのかを知る必要性が確認できたと共に,リハビリテーションアプローチ立案の一助となると思われる。

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