糖尿病多発神経障害を伴った2型糖尿病患者の重心動揺計を用いたバランス能力評価についての検討  [in Japanese]

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Author(s)

    • 鈴木 康裕
    • 筑波大学附属病院リハビリテーション部|筑波大学大学院疾患制御医学専攻代謝内分泌内科学|つくば糖尿病予防セラピスト研究会
    • 矢藤 繁
    • 筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科
    • 加藤 秀典
    • 筑波大学附属病院リハビリテーション部|つくば糖尿病予防セラピスト研究会
    • 石川 公久
    • 筑波大学附属病院リハビリテーション部|つくば糖尿病予防セラピスト研究会
    • 島野 仁
    • 筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科

Abstract

【はじめに,目的】糖尿病患者では加齢により転倒リスクが高まることが報告されており,糖尿病多発神経障害(diabetic polyneuropathy,以下DPN)に起因するバランス障害がその一因である可能性がある。そのためDPNにおけるバランス能力の実態を把握しておくことは重要である。バランス能力は静的バランスと動的バランスに大別されるが,静的バランス能力の評価指標としては,重心動揺計を用いた測定(重心動揺検査)がよく知られており,立位時の重心動揺について精密に測定することが可能である。一方,動的バランス能力も重心動揺計を用いた評価が可能であり,望月らは姿勢安定度評価指標(Index of Postural Stability,以下IPS)を考案している。Nardone Aらは静止立位における静的な測定にはない重心移動などの立位環境の条件を設定することで,思わぬ事態に対応する動的バランスを評価できると述べており,IPSは転倒との関連性の高い動的バランス能力を表す指標であり,DPNにおいても動的バランス能力を鋭敏に評価できると考えた。そこで,DPNの非罹患者から罹患者までの幅広い糖尿病患者を対象とし,IPSを含めた多項目にわたる臨床指標とDPNとの関連性について比較検討を行い,DPNのバランス能力について検討することを本研究の目的とした。【方法】当院内分泌代謝・糖尿病内科に入院し,独歩可能で日常生活の自立した糖尿病患者のうち,重度合併症がなく,運動器障害のなかった2型糖尿病117名(男性59名,女性58名,年齢55±12歳(30~81歳)を対象とした。対象患者から以下の情報を収集した。年齢,性別,糖尿病罹患歴,身長,体重,body mass index(BMI),血液生化学検査値はHbA1c(NGSP),fasting plasma glucose(FPG),total cholesterol(TC),high-density lipoprotein-cholesterol(HDL-C),low-density lipoprotein-cholesterol(LDL-C),triglyceride(TG),creatinine(CRE),循環系評価値として左室駆出率,足関節上腕血圧比,脈波伝播速度指標を計測した。DPNの判定は,振動覚低下,アキレス腱反射消失,自覚症状,足底感覚低下の4項目のうち1項目以上認める場合をDPNとし,症状を全く認めない場合をnon-DPNとした。体組成評価は全身の骨格筋量と体脂肪量を計測し,身体能力評価は膝伸展筋力と膝伸展筋持久力,握力,バランス能力の評価としてIPSを計測した。統計解析は,DPN有無の関連因子の検討について,DPN群とnon-DPN群の2群間での属性の比較検定を行い,有意差を認めた項目を選択し多重ロジスティック回帰分析を行った。DPN神経障害数との関連因子の検討について,DPN重症度の指標である神経症状数を従属変数とし各変数との関連を単相関にて検定を行い,有意差のみられた項目のみ重回帰分析を行った。さらにIPSを従属変数としDPNおよび神経症状4項目それぞれの有無を投入したReceiver Operating Characteristic(以下ROC)曲線を用い,面積(Area Under the Curve,以下AUC),カットオフ値,感度および特異度を求めた。以上の分析にはSPSS ver.20.0を使用し,統計学的有意差判定基準は5%とした。【結果】DPNの有無に影響する項目について多重ロジスティック回帰分析を行い,説明変数として選択されたのは,IPS(p<.001)と膝伸展筋持久力(p<.05)であった。またDPN神経障害数を目的変数としたstepwise重回帰分析では,IPS(p<.001)のみが説明変数として選択された。IPSとDPN各項目の有無におけるROC曲線から,振動覚と振動感覚の良好な正答率および感度であることが示された。【考察】本研究では身体能力として膝伸展筋力,膝伸展持久力,握力,バランス能力の4項目を用いてDPNとの関連を検討した結果,バランス能力(IPS)が最も関連することが明らかとなった。動物実験では,高血糖が運動ニューロンを小さくすること,高血糖が誘因となり筋繊維が萎縮することが報告されている。さらに臨床においてもDPNにより筋力低下が発生することが報告されている。一方で,DPNの罹患早期においては,アキレス腱反射が消失していても筋力低下は発生しないとも報告されている。すなわちDPN罹患後において腱反射が筋力より早期に障害されることが示唆されている。腱反射は,姿勢調整すなわちIPSに影響を及ぼすものと考えられ,本研究の結果は先行研究を支持するものであった。【理学療法学研究としての意義】IPSはDPNの新しい存在診断方法,DPNの定量的評価方法,バランス能力低下者の抽出方法として,臨床における有用性が高い評価方法であると考えられた。

Journal

  • Congress of the Japanese Physical Therapy Association

    Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2014(0), 0504, 2015

    JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

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