短下肢装具装着時の歩行中の蹴り出し動作改善に向けた予備的研究

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著者

    • 米津 亮
    • 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科
    • 山縣 学
    • 北村化学産業株式会社 大阪営業部
    • 小栢 進也
    • 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科
    • 淵岡 聡
    • 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科

抄録

【はじめに,目的】下肢装具は,脳卒中片麻痺や脳性麻痺を有する患者の歩行をより効率的に遂行させるといった観点で,その使用が推奨されている。一般的に,下肢装具では足部に存在する痙縮の影響を考慮し足関節底屈可動域を0度に設定した構造のものが主流であるが,近年この運動を油圧で制動する短下肢装具が開発され,踵接地時により正常な関節運動の再現が可能となったことが報告されている。その一方で,立脚終期に足関節底屈運動を十分に発揮した蹴り出し動作が困難なことも言及されているが,その特徴について検討した研究は我々が知りうる範囲では見当たらない。そこで,本研究では健常成人を対象に,装具装着による蹴り出し動作の運動学および運動力学的特徴の把握を目的に予備的研究を実施した。【方法】対象は,健常成人女性10名(18-24歳)とした。歩行動作は,裸足および底屈0度に設定した短下肢装具(装具1)と底屈15度に設定した短下肢装具(装具2)の3条件で実施した。そして,各条件をランダムに導入し,10メートルの歩行路にて歩行を実施してもらった。なお,この歩行路の5メートルの位置に1枚の床反力計(100Hz)(TF-3040:テック技販社製)と動作解析システム(Kinema Tracer:キッセイコムテック社製)に付属するデジタルカメラ2台(30Hz)を右側方にそれぞれ設置した。そして,右下肢の膝関節・外果・踵骨・第5中足骨の4箇所にカラーマーカーを貼付し,動作を記録した。また,前脛骨筋と腓腹筋(外側)の2箇所に電極を貼付し,表面筋電計(1000Hz)(MQ-Air:キッセイコムテック社製)にて筋活動を記録した。対象者には,各条件で右足が床反力計を設置した歩行を再現できるように事前に十分な練習時間を設け,自然な速度で5回ずつ動作を記録した。これらの記録から動作の立脚時間,関節角度,下肢の垂直分力および下肢対象筋の活動量を算出した。立脚時間は右踵接地から右足趾離地までとし,この区間を100%SP(%Stance Phase)として正規化した。関節角度は,足関節の踵接地時の角度と最大背屈角度を求めた。垂直分力については,立脚終期で観察される最大ピーク値を体重で除した値(N/Kg)を算出した。筋活動については,Root Mean Squareにより平滑化し,85-100%SPの最大振幅値を0-85%SPの最大振幅値で正規化した値(%EMG:%Electromyogram)を算出した。統計処理として一元配置分散分析反復測定法を行った後に多重比較検定Bonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】立脚時間は,3条件において有意差を認めなかった。足関節は,踵接地時においては装具1が他の2条件よりも有意に増加した(P<0.01)が,裸足と装具2の条件では有意差を認めなかった。一方,足関節最大背屈角度は,装具装着した2条件で裸足よりも有意に増加した(P<0.01)。垂直分力は,装具装着した2条件で裸足よりも有意に低下した(P<0.01)。筋活動は,腓腹筋については3条件で有意差を認めなかったが,前脛骨筋については装具装着した2条件では裸足よりも有意に増加した(P<0.01)。【考察】今回の研究結果より,先行研究と同様に,短下肢装具装着時の歩行中の蹴り出し動作はその力を十分に発揮できないことが示された。このような所見が観察された要因として,装具装着により立脚期中に過度な足関節背屈運動が出現し,前遊脚期に移行しても前脛骨筋の筋活動が持続していることが起因しているものと推察する。【理学療法学研究としての意義】本研究で得られた知見を基に蹴り出し動作を改善できる短下肢装具の改良・開発に結び付けることは,脳卒中片麻痺や脳性麻痺を有する患者のより効率的な歩行の再現に寄与すると思われる。このような研究は,障がい児・者の社会参加を促進する福祉用具の開発という観点で意義の高いものと考えている。【謝辞】本研究は,公益財団法人大阪公衆衛生協会より平成26年度「母と子のすこやか基金」の助成を受け実施した。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2014(0), 0588, 2015

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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