東京近郊の一農村における近現代の食生活

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タイトル別名
  • The eating habits in the farm village in the suburbs of Tokyo
  • イモ類を中心に
  • Focusing on potatoes

抄録

【目的】演者らは先に、大正末期から昭和初期におけるジャガイモ調理の実態を調査し、農村部ではジャガイモが里芋の代替として広く和風料理の材料に用いられていたことを報告した。本研究では東京近郊の一農村を取り上げ、近現代における都市近郊農村の食生活の実態、およびその変化と要因について、イモ類を中心に検討することを目的とした。 【方法】調査対象地域は、旧神奈川県都筑郡中川村周辺(現横浜市都筑区・港北区の一部)とした。明治後期の食生活の実態を知る資料として「中川村村是報告書」、大正期~昭和40年代の実態を知る資料として「港北ニュータウン地域内歴史民俗調査報告(7巻)」を用いた。両資料よりイモ類の入手方法・調理法・料理に期待する事柄、および食事全般の内容・材料を精査し、これらに関与する地勢、交通、農業、流通等についても調査した。 【結果】①ジャガイモは明治後期にはまだ新しい作物であり、単独で小昼等に食べられていた。大正期以降には一般的な自給作物となり日常の煮物や汁物の材料に用いられていた。両資料ともに洋風料理は出現しなかった。一方里芋は明治後期から常に一定量が栽培され、晴れ食に欠かせない食品として行事の際食べられていた。両者の位置づけには明確な差が見られた。②明治後期、当該地域では麦混合飯と野菜類を中心とした自給自足の食生活が営まれていた。大正以降はさまざまな園芸作物を東京・横浜方面に出荷し、得られた現金収入をだし素材や魚、ごくたまに肉類等の購入に充てていた。しかし食事の内容は明治後期から大きな変化はなく、麦混合飯が昭和30年代まで食べられていた。  一農村の約60年の食生活を調査するなかで、ジャガイモが新しい食品から日常の和風料理の材料へと浸透していく過程を確認することができた。この結果は先の調査結果を裏付ける知見のひとつと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670783488
  • NII論文ID
    130005264213
  • DOI
    10.11402/ajscs.28.0_14
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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