高等学校家庭科における食物アレルギー対応策に関する研究

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タイトル別名
  • Study on food allergy countermeasure in the high school home economics

抄録

【目的】<br> 2012年12月に調布市の小学校で食物アレルギーを持つ女児が学校給食を食べ死亡する事故が起きた。この事故以降、2015年3月には文部科学省から「学校給食における食物アレルギー対応指針」が出され、学校給食がある小学校・中学校においては食物アレルギーの対策がさらに進んできている。しかし、近年では成人の食物アレルギーが増加しており、学校給食がない高等学校においても食物アレルギー教育が必要ではないかと考えられる。よって本研究では高等学校家庭科で行われている食物アレルギー対策や、食物アレルギーに関する授業の取り組みの実態を明らかにすることを目的とする。<br><br> 【方法】 <br> 小学校・中学校・高等学校の家庭科の教科書調べを行い、時代背景による記載内容の変遷や、現行の教科書で教えられる内容の限界を調べた(現行およびそれ以前計31冊)。 アンケート調査は京都府内の高等学校家庭科教員を対象に2015年8月から9月に行った。調査方法は(1)8月3日に京都府高等学校家庭科研究会にて自記式質問用紙を配付した。(2) (1)で配布できなかった高等学校には自記式質問用紙を各校一部郵送した。回収はどちらも郵送法で行い、配布数合計118部、有効回収数53部(内訳:国公立32部、私立21部)、有効回収率は44.9%であった。アンケート内容は、学校内全体での食物アレルギー対策の取り組み、家庭科の授業および家庭科の調理実習に関することである。アンケート回答者の中から聞き取り調査も行った。調査内容は生徒、調理実習、教材、アンケート内容に関することである。<br><br> 【結果・考察】<br> 教科書調べより、食物アレルギーを持つ児童・生徒の数が増加している現状や、小学校の死亡事故を受け、小学校・中学校・高等学校の教科書改訂毎に食物アレルギーに関する項目が増加していることが明らかになった。記載内容を調べた結果、中学校・高等学校の教科書全てにおいて特定原材料7品目の記載があった。家庭基礎の教科書にはアレルギー物質を含む食品表示例、特定原材料に準ずる18品目全てを記載しているのもあった。しかし、出版社の違いや同じ出版社でも家庭科の科目の違いによって教えられる範囲が異なっている現状であった。 アンケート調査結果から回答者の62%が家庭科の授業で食物アレルギーを取り上げている、または取り上げたことがあると回答した。また、半数以上が家庭科の授業において食物アレルギーを扱うべきだと感じていた。一方で、食物アレルギーを扱うべきだと感じない理由として家庭科の授業時間数が少ない、教科書や学習指導要領に食物アレルギーに関する詳しい記載がないことがあげられた。今後食物アレルギーを授業で扱うために、授業時間数の増加、食物アレルギーを説明できる教材、食物アレルギーの概要が掲載されている冊子が必要だと感じていることが明らかになった。 聞き取り調査の結果から、調理実習の目的が達成できない理由から個別にメニューの変更は難しいことや、教員の食物アレルギーに対する取らえ方の違いにより、生徒全員への周知方法に違いがあると分かった。<br><br> 【今後の課題と提案】<br> 食物アレルギーは命に関わる大きな問題であるため、授業で取り扱うべきである。しかし、家庭科の授業時間数減少や、学習指導要領に記載がない理由から授業で取り上げたくても取り上げられない問題があった。以上のことより今後は少ない授業時間数の中で食物アレルギーを短時間で教えられる教材を作成することが必要であると考える。また、食物アレルギーを持つ生徒も調理実習に参加できるよう代替食のレシピ作りを提案していく必要があると考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572538240
  • NII論文ID
    130005286982
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_105
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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