肩関節周囲炎におけるMRIでの肩前方輝度変化は結帯動作の制限因子になりうるか?

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抄録

【はじめに】肩関節周囲炎の病因は,特発性,腱板炎,肩峰下滑液包炎,上腕二頭筋腱炎など諸説あり,その詳細については未だ明らかでない。治療は基本的に保存療法が選択され,関節運動制限に対して理学療法が処方されることが多く,制限される運動方向などを基に制限因子を推測し治療が行われる。その際,結帯動作に制限を有する症例では,MRIにおいて肩前方の輝度変化を示す例を多く経験する。そこで本研究ではMRIでの肩前方輝度変化と結帯動作を含む他の理学所見の関連を検討した。【方法】対象は2014年4月から2015年8月までの期間に当院にて肩腱板断裂,腱板損傷,肩峰下インピンジメント症候群,肩関節周囲炎の傷病名に対して保存的治療が行われ,MRI撮影と同時期に日本整形外科学会肩関節機能評価(以下,肩JOA score),肩関節可動域を含む理学所見の評価が行われていたものとした。除外基準は40歳未満,中等度以上の腱板断裂,石灰沈着性腱炎,変形性肩関節症とした。その結果本研究の対象者は24名25肩,平均年齢62歳(46-81歳),男性9名,女性15名であった。方法は診療記録を後方視的に調査,MRI T2強調像の医師,放射線技師の読影結果を基に,肩甲下筋腱辺縁および滑液包部(以下,前方)の高輝度変化の有無を確認した。また理学所見は,Visual analogue scale(以下,VAS),肩JOA score,自動挙上と外旋角度,結帯時母指到達脊椎高(以下,結帯),肩関節屈曲,外転,下垂位外旋,下垂位内旋,水平内転,水平外転角度として,輝度変化の有無での二群間の差を検討した。統計学的処理にはDr. SPSS II for windows 11.0.1 Jを用い,正規性の有無に従い対応のないt検定,Mann-Whitneyの検定を有意水準5%未満にて行った。【結果】MRIにて前方の輝度変化を認めたのは25肩中11肩(44.0%)であった。MRI前方輝度変化の有無での違いは結帯でみのみ有意な差を認め,前方輝度変化ありでは平均第4腰椎,前方輝度変化なしでは平均第1腰椎と前方輝度変化ありが有意に低位であった(p<0.05)。【結論】結帯動作は肩関節の伸展,内旋を含む動作であり,内旋制限は肩後方組織の伸張性低下に起因することが多く報告されている。しかし,本研究結果では肩前方に何らかの問題を有すると結帯に制限を生じやすいことが示唆された。これは結帯動作時,肩甲骨の前方傾斜,下方回旋と上腕骨の伸展,内旋するため,棘上筋腱は烏口突起下の方向へ滑り込む必要があるとされている。肩前方組織に問題が生じることで,この棘上筋腱の滑走が制限されるのではないかと推察した。今後結帯可動域の拡大を図る上で,肩前方組織による制限の可能性を策定する必要があると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576070528
  • NII論文ID
    130005417044
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0027
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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