Intersection syndromeに対する病態解釈

DOI
  • 西野 雄大
    いえだ整形外科リハビリクリニック リハビリテーション科
  • 増田 一太
    いえだ整形外科リハビリクリニック リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • ~超音波画像診断装置を用いて~

抄録

【はじめに,目的】Intersection syndrome(以下,IS)は前腕遠位橈背側にある長・短橈側手根伸筋腱(以下,ECRL・B腱)と長母指外転筋,短母指伸筋(以下,APL,EPB)の交差する部分での疼痛,腫脹,軋轢音を主徴とする稀に診断される疾患である。本疾患の正確な病因は未だ明らかになっておらず,超音波画像診断装置(以下,エコー)を用いて病態解釈を行った報告はない。そこで今回,ISと診断された2症例に対してエコーを用いて病態解釈をしたので報告する。【方法】対象は平成27年2月~8月までに当院にてISと診断された男性2名とした。身体機能評価として疼痛部位の視診・触診,ISに関与する筋の圧痛,動作時痛の有無,手関節可動域測定,整形外科テストを実施後,エコーを用いてIntersection部を観察した。【結果】2症例ともにエコー所見では圧痛部位のEPBおよびその直上の筋膜にドプラ反応を認め,健側と比較してEPBの肥厚を確認した。またIntersection部に腫脹と熱感,さらに同部とEPBに圧痛を認め,手関節掌屈位で疼痛と軋轢音を訴えた。整形外科テストでは症例1はFinkelstein test,Eichhoff test,Thomsen testが陽性であり,症例2はFinkelstein test,Eichhoff test,麻生test,岩原・野末test,Thomsen testが陽性であった。【結論】ISは橈屈や捻れ動作による手のoveruseにより生じる前腕遠位橈背側の疼痛といわれている。本疾患の病態はECRL・B腱とEPB,APLの筋腹間の機械的摩擦や第2区画腱の狭窄性腱鞘炎が主病変と述べられていることが一定の見解を得られていない。本研究におけるエコー所見にてIntersection部のEPBおよび直上の筋膜でのドプラ反応や健側と比較してEPBの肥厚を確認し,一般的な報告と異なる所見が観察できた。これは手関節橈背屈時にはEPB腱が手関節橈屈軸の直上を走行しAPLに比べ力学的に有利であるため,掌尺屈方向に抵抗しやすい。その上APLに比べEPBの滑走距離が明らかに大きいことからEPBの機械的摩擦が生じやすいため炎症と肥厚に至ったと考えた。次にIdlerらは本疾患発症に筋膜が関与する可能性を指摘しており,掌尺屈方向への反復される離断ストレスにより炎症に至ったと考えた。本疾患の病態には様々なバリエーションがあると報告されているが,本研究においてエコーを用いたことで本病態の基盤にはEPBの過収縮と筋膜の離断ストレスが関与する可能性が示唆された。そして固定や安静のみでなく積極的な運動療法を実施することで良好な成績が得られると考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576893952
  • NII論文ID
    130005417248
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0219
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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