痛みリエゾン外来における慢性疼痛患者の痛みと動作能力の関係

DOI
  • 太田 晴之
    岡山大学病院総合リハビリテーション部
  • 岩井 賢司
    岡山大学病院総合リハビリテーション部
  • 野澤 康明
    岡山大学病院総合リハビリテーション部
  • 築山 尚司
    岡山大学病院総合リハビリテーション部
  • 堅山 佳美
    岡山大学病院総合リハビリテーション部
  • 千田 益生
    岡山大学病院総合リハビリテーション部
  • 西田 圭一郎
    岡山大学大学院医歯薬総合研究科生体制御科学専攻機能制御学講座人体構成学分野
  • 鉄永 倫子
    岡山大学病院整形外科脊椎脊髄外科・痛みリエゾン
  • 佐々木 賢太郎
    金城大学大学院リハビリテーション学研究科リハビリテーション学専攻
  • 西江 宏行
    川崎大学附属病院麻酔・集中治療科

抄録

【はじめに】2012年4月より慢性疼痛患者に対し,痛みリエゾン外来(開始時は麻酔科リエゾン外来)を開始した。チームは麻酔科医,整形外科医,精神科医,理学療法士,看護師,臨床心理士,薬剤師で構成されている。条件として問診票の記入ができるもの,各医療者側の検査測定が可能なものとした。6ヵ月を治療期間とし,初診時,1ヵ月目,3ヵ月目,終了時の6ヵ月目で定期的な検査測定から評価を実施している。【目的】理学療法を施行した前後の変化,痛みと動作能力の関係を比較検討する。【対象と方法】対象は他院にて身体的・精神的に治療困難とされた慢性疼痛患者136名のうち,理学療法にて6ヵ月間経過が追えた,50例(55.7±15.3歳,男性20名・女性30名)とした。主な疾患の内訳は脊柱管狭窄症12例,頸椎症9例,変形性脊椎症6例,腰椎椎間板ヘルニア4例,筋筋膜性腰痛2例,繊維筋痛症2例,その他15例であった。症候は腰痛15例,全身痛11例,下肢痛7例,頭頸部痛3例,坐骨神経痛4名,その他10名であった。理学療法前後の測定項目はTimed up & go test(以下,TUG),Finger Floor Distance(以下,FFD),片脚立位時間とし,痛みの測定はNumeric Rating Scale(以下,NRS)にて施行し,最も痛みの強い時期のNRSを使用した。検討項目はTUG,FFD,片脚立位時間に対し①初診時のPT施行前後の比較,②6ヵ月時のPT施行前後を比較,③初診時PT施行前と6ヵ月時のPT施行後の比較はWilcoxon符号付順位和検定ならびに,④初診時PT開始前TUG,FFD,片脚立位時間とNRSの関係性,⑤6ヵ月時PT施行後TUG,FFD,片脚立位時間とNRSの関係性についてはピアソンの積率相関係数を用い,5%水準にて統計学的検討を行った。【結果】初回時の理学療法施行した前後では,FFDのみ16.7±17.1cmと12.1±15.5cmであり施行前後で有意差(p<0.05)が認められた。6ヵ月時の理学療法施行した前後ではTUG10.0±5.7秒と9.4±5.1秒,FFDは11.6±13.4cmと7.1±9.6cm,左片脚立位時間では27.9±19.6秒と30.2±19.7秒施行前後で有意差(p<0.05)があった。初回時の理学療法施行前と6ヵ月時のPT施行後の比較ではTUG,FFD,左片脚立位時間で有意差(p<0.01)が認められ,右片脚立位時間では有意差は無かった。初診時TUG,FFD,片脚立位時間とNRSの関係性では,TUGとNRS間に弱いながら相関関係(r=0.33,p<0.05)を認めた。また6ヵ月時TUG,FFD,片脚立位時間とNRSの相関関係は,初診時と同様にTUGとNRS間に弱いながらも相関関係(r=0.42,p<0.05)を認めた。【結論】痛みリエゾン外来が6ヶ月間継続可能な症例では理学療法に対し,施行直後より良好な反応を示す患者が多く,初回時と6ヶ月時では明らかな改善がみられた。またNRSとTUGに弱いながらも相関関係を認め,PT開始時よりも6ヵ月時に相関関係が強くなる傾向がみられた。慢性疼痛患者の痛みの改善度と動作能力をみる指標として,TUGが利用できることが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576493056
  • NII論文ID
    130005417258
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0309
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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